着ぐるみパンダさん 2022-02-12 16:39:37 |
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あら、狼さん、私に怖がって欲しいの?
確かに、物語の中では悪者だけれど…貴方は今、私を助けてくれたもの。私にとって、親切にしてくれたのは貴方だけよ。
( 脅すような、寂しいような、そんな声色で話す相手に、離せ の声には従わず、尚も毛ざわりを楽しむように優しく撫でながら上記を述べた。
彼の言う通り、幼い頃、まだこの目に世界が映っていた頃、母に貰った絵本でおとぎ話を読んだ事があった。狼は女の子とおばあさんをぺろりと食べてしまうと、最後には狩人に倒され、幸せになるのは女の子とおばあさん。
それでも、今の自分にとって、助けてくれた彼は恐ろしい存在なんかじゃなかった。仮に、この後、絵本の中の女の子のように食べられて仕舞おうとも、どのみち、自分には帰る家がないのは分かっていた。
それにしても、と相手を撫でる手を止め、もう一度顔を上げて辺りを見渡す素振りを行えば、その手は相手の背に置かれたまま、狼と話しているという状況に不思議そうに首を傾げた。)
……夢、じゃないのよね、
私、実はとっくに死んでいるのかしら。
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