門番 2022-01-22 17:59:35 |
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>37 鴉さん
ごちそうさまでした。―――変身はしなくても大丈夫です。何というか、貴方はそのままでも鴉みたいですから。
(近くにあったバスケットに入っていたクッキーを口に運び、冷めた紅茶で流し込む。クッキーも紅茶も絶品だったが、まともに味わう余裕は既になくなっていた。お茶を飲み干してティーカップを空にした時、悲鳴と共にびゅうという音を運ぶ冷たい風が肌を刺す。ぶるりと身震いすれば先ほどまでの頬の熱も冷め、かたりとカップを戻したときには冷静さを取り戻していた。既に肘をついていた彼に礼を言って頭を下げると、椅子から立ち上がり彼の側に向かう。漆黒のローブもそこから覗く濡れ羽色の髪も、鴉を体現したようなものだと見惚れながら思ったことをそのまま告げた。悲鳴は鳴りやむこともなく、地面には持ち主を遠い昔に失ったような色褪せたハンカチまで落ちている。絶望を具現化したような世界で、彼の存在が拠り所となりつつあることを心のどこかで感じ始めていた。)
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