刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 店員の話を軽く頷きながら聞く。特別不審に思う点も無く、包み紙のゴミを預かったのも子供がその場で食べると言うならば自然な事だろう。何かを察した様にレジ下のゴミ箱を示されるとその隠し事の無い行動に一拍程の思案の間を空けた後「…失礼します、」と箱から袋を抜き取り持ち帰る事として。最後にレジ横に売られている包み紙に包まれた丸いミルクチョコレートを二つ摘みお金を払うと、捜査協力への感謝を述べてお店を出て。___署に戻り先ずは袋の中のゴミの中からおまけのチョコの包みを避ける作業、そしてそれらを成分分析官に渡し調べて貰う事の順なのだが。手袋をする前に鞄から先程買ったチョコレートを取り出すと一つを相手に手渡しつつ「夜まで待てなかった。」肩を竦め、甘いそれを口の中に放り込み満足気に息を吐いて )
( 捜査協力に対する謝礼の意味を込めて店頭の菓子を購入したのだとすれば、相手の気分を害さないようにと随分気を遣った対応だと思って見ていたものの、そうでは無かったようで。執務室でチョコレートの包みを手渡されると、自分も其れを口に放り甘い味わいを堪能して。「糖分を摂ると幾らか頭が働くようになる。」と言いつつ、手袋を嵌めると包装紙の仕分けを始めて。---残っていたゴミは大量ではなく、おまけのチョコレートの包装紙は19枚。それを全て成分分析の部署に引き渡すと分析を依頼して。相手と共にデスクを挟んで座ると、必要な情報を整理する。「まず、現時点で最後に被害者が目撃されているのは事件当日の午後3時16分、シュガーリーの店だ。検視結果は明日には出るだろう、死亡推定時刻と擦り合わせる。後は死因の特定と、現場に残されていた薬の出所だな。不審な車や人物、物音に関する情報も地域住民から集めたい。」と告げて。検視結果が出る明日までに出来る事と言えば、不審な物を見聞きしていないかという聞き込みだろう。 )
__キャンディーを買った足で真っ直ぐ空き家に向かったのか、それとも何処か別の場所に立ち寄ったのか…死亡推定時刻が出ればある程度の足取りも掴めるだろうけど、それまでにもう少し情報が欲しいね。…薬瓶から誰かしらの指紋が出れば良いけど、そうじゃなきゃ病院をしらみ潰しって事にもなり兼ねない。
( 今現在の状況整理に相槌を打ちながら手元の手帳に視線を落とす。頭の中でお菓子屋周辺の凡その地図と、ミケルの家までの道筋、そして空き家までの道筋を思い浮かべながら次なる聞き込みの範囲を絞込みつつ「夜は、ジョイの働くお店の周辺の聞き込みに行って来る。」と、数時間後の予定を告げ顔を上げ。__デスクを挟み座る相手は至極真剣な顔をしている。孤高たる気高さの様な雰囲気を纏い捜査に打ち込むその姿の内に、秘めた繊細さや儚さがある事など、今の表情からは想像も出来ないと、今でも時折思う。僅かその顔を見詰め、「…調子は悪くない?」出た問い掛けは殆ど無意識下で音になったようなもので )
…解決の糸口になる情報が出れば良いんだが、
( 未だ分からない事が多い今回の事件。鑑識の捜査や検視結果から、事件の解決に繋がる情報が出れば良いと願わずにはいられない。相手の言うように今は聞き込みで地道に情報を集める以外無いだろうと頷いて。向かい合った相手の視線を感じて顔を上げると、相手と視線が重なる。何だと問い掛けようとしたものの、相手の方が先に言葉を紡いだ為それは音にはならず。「…問題ない、薬も飲んでる。」そう答えると、再び視線を資料に落として。一時幻覚を見るまでに悪化した症状はだいぶ落ち着き、普段通りに仕事をこなせる迄には回復していた。未だ疲れやすいのか、夜家に帰ってから感じる疲労は少し重くなっている気はするものの、日中に支障をきたす程では無い。薬をきちんと飲めば体調に問題はないだろうと。 )
( 一瞬重なった瞳は、相手が視線を落とした事で交わりを無くした。確かに痛みや目眩等を訴える姿を此処最近は見ていない為、相手の返事に素直に頷きそれ以上の心配や詮索をする事は無く。___その後、“解決の糸口”となる情報をどうにか得る為に暗くなった町へ。ジョイの働くお店周辺での聞き込みの結果は、捜査が大きく進展する様な有益な情報に恵まれなかった。けれど集合住宅が多く並ぶ付近での聞き込みの結果は別。“今回の犯行は自分がやった”と自白している“女の子”が居ると、被害者であるミケルと同年代の子供が居る親からの証言が数件出たのだ。大人では無い、女の子の自白…面白半分や軽い冗談のつもり、もしくは注目を浴びたい承認欲求の様なものによる作り話かと思うのが最初の正直な感想だった。___署に戻り、執務室の扉をノックする。「戻りました。」との挨拶の後、何とも曖昧な表情で「…エバンズさん、“女の子”が犯人の可能性ってあると思いますか?」と、何の前置きも無い唐突な問い掛けをして )
( ノックの後、聞き込みから戻ってきた相手が部屋に入って来て発した言葉に、思わず怪訝そうな表情を浮かべて顔を上げる。言葉を発した本人も曖昧な表情をしていて、“女の子”という言葉選びに「……犯人が子どもだという事か?」と尋ねて。子ども同士がふざけていて薬を誤飲した可能性は拭えないかもしれないが、外傷が見当たらない以上遊んでいる最中の事故というのは考えにくい。「子どもに関する証言でもあったか、」と、聞き込みで得た情報の説明を相手に求めて。 )
( 案の定此方の問い掛けに怪訝な表情を浮かべた相手に、曖昧な表情のまま「“本人”曰く。」と頷きながらデスクを挟んだ向かい側の席に腰掛け。「“自分が犯人だ”って話してる女の子が居るらしくて。子供の冗談のつもりだとは思うけど、それを聞いたのが1人や2人じゃないから、」子供の冗談だとしても笑える話では無いが、矢張り周囲にそれを言って回る行為はとても犯人だとは思えない。「…何方にせよ、検死結果が出ればわかる事だけど。」と、終わらせた後は、果たしてこの聞き込みの結果を相手はどう考えるのかと返事を待つ間を空けて )
( 地域を不安に陥れているであろう事件を、自分の仕業だと吹聴して回る子どもの存在と言うのは確かに気になるが、その証言があるからと言ってその子が犯人だと言う結論には至らない。例え子どもの不注意で起きた事故だったとしても大抵の場合は其れを隠蔽しようとする筈で、自分が殺したのだと周囲にまで誇示しているということは、注目を集める為の虚言だと考えるのが普通だろう。「気になる証言ではあるが______大方、注目を集めたくて言っているんだろう。証拠が出れば別だが、特段急いで被疑者としてマークする必要性は無さそうだな、」と、被疑者として捜査をする必要性までは現時点で感じないという判断を示し。---夜、そろそろ切り上げて帰ろうかという時分になって、不意に部屋がノックされ、入って来たのは検視官。『夜分にすみません、明かりが点いているのが見えたもので、早い方が良いかと…』少し早く結果が出た為夜のうちに渡せるならと思って持って来たという彼は、執務室の扉近くにいた相手に検視結果を記した書類を手渡して。 )
( 相手の意見もまた、注目を浴びる為の虚言だろとの事。「だね。」と同意を示す様に頷き、後は明日にでも出るだろう検死結果を待つだけだと帰り支度をしようとした矢先。部屋の扉がノックされ、続いて入って来たのは検視官だった。頭は自然と彼に向き、その言葉だけで渡された書類が何か直ぐにわかったものだから、お礼を述べた後、文字列に視線を落として。「__…午後3時から4時頃…、」先ず最初に目に入った死亡推定時刻を小さく呟き、紙を相手も見やすい様デスクに置く。「……薬の成分が検出されてないなら、あの抗うつ剤はたまたまって事?__これじゃあ死因が特定出来ない。」毒の成分は疎か、遺体の周りに散らばっていた薬の成分も検出されず、外傷も無い。加えて最も可能性の高い“窒息死”も除外されるのならば、死因については殆ど進展の無いままだ。思わず表情が険しくなり、隣の相手に視線を向ける。「…明日、司法解剖の許可をとりますか?」と、尋ねて )
( 検視結果が記された資料に目を通す。死亡推定時刻は分かったが、薬物や毒物の反応は無く外傷も無い。死因を特定する事が困難な結果に思わず眉を顰めて。「外傷が無く、毒物の反応も無い_____あの状況で自然死なんてあり得るか、?」当然殺人事件の可能性を視野に捜査を進めていた訳だが、死因の特定さえ困難な状況。偶然あの場所を訪れた少年が、偶然あの場所で体調を崩して亡くなるなんて事があり得るだろうか。少年の遺体の周りに散らばっていた薬はどう説明するのか。「…死因が特定出来ない以上、医者の見立ては必要だな。」と相手の言葉に同意を示して、司法解剖の申請を進めるよう指示を出して。全てがバラバラで真実が見えて来ない状況に、何か解決の糸口が無いかとここ迄の捜査記録と検視結果を照らし合わせて。---重たい疲労を感じてパソコンから目を離し時計を見上げると、日を跨いで少し経った頃。「……聞き込みと、司法解剖の結果待ちだな。死亡推定時刻を考えると、ほとんどあの周辺以外に移動している事は無いはずだ。エリアを絞って話を聞こう、母親にももう一度会いたい。」と告げ、今日は切り上げようと。 )
( 検死結果が出れば死因が特定され、少なからず犯人に近付くと思っていただけに、この予想外の結果には流石に困惑を隠し切れなかった。捜査の進展どころか、下手したら殺人事件だと言う見立てすらも間違いで振り出しに戻される可能性がある。「偶然が重なり過ぎてるし、抗うつ剤がたまたま遺体の周りに散らばったって言うのも、正直納得は出来ない。」と、矢張り疑問点は数多く残されていて“殺人”を除外する事は出来ないと首を横に振り。裁判所に司法解剖の許可をとる為の申請書諸々は明日の朝一番にやる事として、死亡推定時刻から、今度の聞き込みの範囲はかなり絞られる。被害者の家の周辺、空き家の周辺を重点的に聞き、相手の言う通り母親であるジョイにも再び話を聞く必要がありそうだと頷き、帰宅する事として。___家に着いた途端に襲い来る睡魔は、確かに疲労していた事を告げてきた。深く息を吐き出してから、身体が欲するままに淹れたのは蜂蜜たっぷりのホットミルク。それを作るのは幾ら疲れていても少しも苦にならないのだ。相手のは自分のより少しだけ甘さを控え目にして「…流石に予想外だったね。」と、マグカップを手渡しつつ、口にしたのは検死結果の内容に関する感想で )
( 相手と共に家に帰り、ソファに腰を下ろして背もたれに背中を預けるとどっと身体が重たくなるのを感じた。張っている肩を片手で軽く解していると、程なくキッチンから甘い香りが漂ってくる。ややして相手から差し出されたマグカップを礼を言って受け取ると「…殺人だとしても、あんなに綺麗な状態で殺せる手段が思い当たらない。毒物の類でも無いとなるとな、…」と、相手の言葉に同意を示しつつ見立てが見当違いだった検視結果を思い出し考え込む。甘いミルクを一口飲むと、張り詰めていた疲労は僅か和らぐ感覚があり、小さく息を吐いて。温かなホットミルクは、穏やかな眠気を引き連れて来る。睡眠薬は飲まずに眠る事が出来そうだと。 )
…極小量の毒を毎日摂取させて__いや、それだって体内に全く残ってない筈は無いか…。
( 相手の隣に腰掛け険しい表情で考え込む。これと言った薬物類の検出も無く外傷も無い状況で“殺人”として考え難いのは確か。けれど自然死と片付けるには余りに偶然が重なり過ぎている。甘くまろやかな白を胃に落とし、体内から柔らかな熱に包まれるのを感じながら思考を止めた。今あれこれ考えた所で何が進む訳でも無い。明日再び聞き込みをし、司法解剖の結果を待つ事が出来る事だろうと「…こんな時間だし、取り敢えずもう寝よう。」一度眉間を揉み解し、マグカップの中を飲み干して。それから眠る準備をして相手と共にベッドに入る。時刻は既に夜中の1時を過ぎた頃。ホットミルクの温かさがそのチカラを十分に発揮し、相手に訪れる睡眠が少しでも優しいものである様にと願いつつ瞳を閉じて )
( ____夜中に悪夢に魘され目を覚ましはしたものの、少しの息苦しさを感じゆっくりと呼吸を繰り返しているうちに意識は再び眠りに沈み、発作を起こしてしまう事はなく。---朝目覚めても身体が重い気がするのは、連日の捜査で少なからず疲れが溜まっているからだろう。出勤すると、司法解剖の申請書を相手が出したのを確認してから共に町へと出る。まずジョイの元へと向かうと、彼女は自分たちをリビングに通した後、少し表情を暗くした。『実は…少し前に女の子が家に来たんです。ミケルに会いたいって。ミケルよりは少し歳上の子でした。あの子は居ないと伝えると、”ミケルが居なくなって悲しい?どんな気持ち?“って、何度も聞かれました。ちょっと怖くなって……後で聞いたら、地域では有名な問題児だって。孤児院の子みたいでした。』と。その少女が、相手が昨日噂を聞いてきた“犯行を自供している少女”と同一人物だと考えるのが普通だろう。思わず相手と顔を見合わせて。 )
( 少女の自供は“注目を浴びたいが為のタチの悪い作り話”、そう思っていたがそれは間違いだったのかもしれない。実際に少女が犯人ではなくとも、何かしらの形で事件に関わっている、もしくは何かを知っていると考えるべき証言だ。相手と顔を見合せ幾許かの焦燥と驚愕を表情に浮かべるも直ぐに手帳を開くと「…その子の名前はわかりますか?」と問い掛ける。実際少女が名乗っていなかったとしても、それだけの問題児として有名ならば地域住人の誰かしらはわかる事だろう。「他にも、もし何か気になる事を言っていたなら教えて下さい。」遺体の周りに散らばっていた抗うつ剤の事、少女が本当に犯人ならばその動機や殺害方法___もし自分達警察しか知らない事を少女が口にしたとなれば、それは大きな証拠になる。何方にせよその少女から話を聞く為署に呼ぶ事は間違いないだろうが、その前に何かあれば、と )
( この事件の犯人は自分なのだと周囲に誇示するように吹聴し、被害者の遺族の元を訪れ接触を図ろうとする。余りにも堂々としていて、どうしても殺人を犯した者の行動には思えず考え込む。相手の問いにジョイは首を振り『名前はわかりません。それに、他には何も…帰るように言ったら大人しく帰って行きました。“孤児院の少し変わった女の子”って言えば、知っている人には通じると思います。』と答えて。未成年の子どもを、物的な証拠がない中すぐに署に連行する事は不可能だろう。先ずはその少女についての証言を集める必要がある。ジョイに礼を言い家を後にすると、「その少女についての話をもう少し集めたい。一度接触出来れば良いが、」と言いながら車に乗り込み。 )
( 結局少女の名前や別の情報は出なかった訳だが、ジョイの言った“孤児院の少し変わった女の子”と言うキーワードがあれば、近い内に少女の身元を判明する事は出来るだろう。車に乗り込み「署に連行出来るだけの証拠が見つかれば良いんだけど。」と、答えつつエンジンを掛け車を走らせた先は、昨晩聞き込みをし少女の話しが多く出た住宅街。付近には学校もあり、此処ならば少なからず有益な情報が得られる筈だと道路の脇に車を停め。「名前がわかれば、孤児院で探す事も出来る。手分けしよう。」この場所に1時間後に落ち合う事を決め、相手と反対側の道沿いでの聞き込みをする事に。結果的に得た情報は少女の名前は【リディア・オルセン】である事、問題児としてこの地域では有名である事、虚言癖があるだろう事、だった。地域住民も虚言癖を疑う程だと言う事は、矢張り少女の自供は余り信憑性が無いのかもしれない。1時間後に車に戻り、得た情報を相手と共有する。「…孤児院に事情を話して、任意同行出来ないかな、」と、まだ何も証拠が無い中だが相手同様、少女と接触をし、話を聞きたい旨を伝えて )
( 相手と同様、聞き込みで得た情報は彼女が地域では有名な問題児でいつも嘘を吐いているという事。事件に関わっているという言葉も聞いた人が何人か居たが、誰もそれを信じてはおらず“いつもの事”と流している様子だった。地域の孤児院に行けば、彼女に会う事はできるだろう。「話を聞くにしても、11歳を1人で署には連れて行けない。証拠が出ていない以上、まずは孤児院で話を聞くのに留めた方が良い。」と、慎重な姿勢を見せる。未成年、それもたった11歳の少女が相手なのだ。言動の真意は聞く必要があるが、先ずは孤児院で接触できれば良いと。 )
( 矢張り相手は慎重だった。証拠も無く、まだ11歳の少女を任意とは言え署に連れて行く事は様々な面をとってもリスクがあるだろう。「わかりました。」と食い下がる事なく頷くとこの地域の孤児院をスマートフォンで調べ。それは街中から少し外れた比較的閑静な場所にあった。周りは木々で囲まれており自然も豊か。航空写真で見るとどうやら近くには小川もあるようで庭が広い印象。___車を走らせ数十分後、孤児院に到着すると、出迎えてくれたのはこの孤児院の院長の女性で。丸い眼鏡の奥から覗く瞳は優しく、自分達に交互に視線を向けると、柔らかな口調で『こんにちは。此処の院長をやらせて貰っています、マリアです。』と名を名乗った後、『本日はどのようなご用件ですか?』と、問い掛けて )
( 自然豊かで閑静な場所にある孤児院。院長の女性に出迎えられると、警察手帳を示し「レイクウッド署のエバンズです。此方はミラー。此処にいるリディア・オルセンさんに話を聞きたいのですが。」と告げると、院長は表情を曇らせた。『リディアですか……あの、これ迄も刑事さんや役所の方が来た事がありますが、何も無かったんです。嘘を吐いて場を掻き乱している事は私どもも把握しています。私たちも手は尽くしているのですが、…』と答えて。どうやらこれまでも、彼女の吐いた嘘によって近くの警察署や役所が動いた事があったようで。彼女は未だ帰って来ていないと言われ、ロビーのソファを勧められ腰を下ろす。院長によると、動物を殺したと吹聴して実際に猫の死骸が見つかった事もあり、警察や役所が来たというのだ。証拠もなく“虚言”として片付けられたが、彼女の問題行動には手を焼いていると告げて。 )
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