白む空に燻る紫煙 ---〆

白む空に燻る紫煙 ---〆

刑事A  2022-01-18 14:27:13 
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  • No.5600 by アルバート・エバンズ  2026-04-20 01:12:50 

 



( 相手は自分が物分かりの良い振りをして呑み込んで来た様々な不条理に対して、いつも怒ってくれる。其れが有難くも、眩しくもあり、同時に心配でもあるのだ。その真っ直ぐさと優しさが仇となって、いつか相手自身の身を危険に晒すのではないか、と。「…記者を殴りでもしてみろ。暴行刑事として直ぐに祭り上げられる。絶対に手を出すなよ、」“あの時”について言及こそしなかったものの、そう口酸っぱく釘を刺す辺り、確りと“あの時”を覚えている事の証明になるだろう。---やがて車は、普段の倍近くの時間を掛けて家へと到着した。辺りに人影が無いことを確認し車を降りるも、その瞬間鋭い痛みが鳩尾に走り、一瞬動きが止まる。痛みは長引くものではなかった為そのままアパートの階段を登り、相手の問いにも頷く事で構わないと答えたものの、部屋の前で扉を開けようと鍵穴に鍵を差し込んだ時にもまた、鋭い痛みが走った。「……っ、」思わず鳩尾を抑えるのと、視界が歪むのは同時で、扉の前で蹲み込んでいた。 )





 

  • No.5601 by ベル・ミラー  2026-04-20 07:49:42 





( 相手にしては珍しい再三の忠告に頷く他無い。先程は思わず録音機を払い除けてしまったが、あの時もしあの機械が地面に落ち破損でもしていようものなら、器物破損と訴えられていても可笑しくは無かっただろうか。___相手と共に階段を上り、部屋への同行を許可された事で微笑むのだが、後は部屋の中へ、と言う所で鍵穴に鍵を差し込んだ相手がその場に崩れる様に蹲ると、手の位置から何が起きたのかを直ぐに察する。署内では監察官の容赦無い取り調べに、外では記者達の心無い質問に晒され続け、当たり前に心身には物凄い負荷が掛かり悲鳴を上げていたに違い無い。「っ、」反射的に両膝をつきしゃがむと、相手の身体が痛みに倒れてしまわないように支える様に片手を背中に回す。「…大丈夫です。大きく、ゆっくり深呼吸して。」痛みに耐える為に息を止めたり、浅く早い呼吸は逆効果で痛みを逃す事が出来ないのは知っていた。だからこそ耳元で静かに…語り掛ける様な柔らかさを努めながら背中を擦り続け、「…此処は安全だからね。もう、エバンズさんを傷付ける人は誰も居ない。」この姿を他者に見られ“弱さ”ととられる心配も無いのだと安心させるように )




  • No.5602 by アルバート・エバンズ  2026-04-20 12:43:02 

 



( 痛みに襲われ、その痛みを逃そうとする呼吸は相手の懸念した通り浅く細いもの。深く呼吸をする事でまた痛みが走るのが怖かった。それでも相手に背中を摩られ“ゆっくり深呼吸を”と促されれば、恐る恐るではあるものの意識的に深い呼吸を心掛け、ややして痛みの波は緩やかに引いていき。いつまでもドアの外で蹲っている訳にもいかず、少し痛みが落ち着いたタイミングで身体を起こすと、鍵を開けて部屋の中へと入る。暗くひんやりとした廊下を通り、鞄をリビングの床に置くとキッチンでグラスに水を汲む。ジャケットのポケットから取り出した鎮痛剤を2錠飲み込んだものの、ポケットの中で指先に触れたのは空のシートばかりだった。不安や痛みがある時に、時間を確認せずに飲んでいた為、既に1日の規定量は超えているだろうか。背中にはじっとりとした嫌な汗を掻いていた。「…大した物は無いが、好きに使ってくれ。部屋に戻るなら、鍵はそのままで良い、」と相手に告げ、ソファに身体を横たえて。 )





 

  • No.5603 by ベル・ミラー  2026-04-20 14:55:58 





( 先程よりかは少し落ち着いたようだったが、未だ嫌な痛みが完全に消えた訳では無いのだろう、ソファに身を横たえた相手の言葉に「まだ此処に居る。」と返し着ていた上着と鞄を壁際に置いてから洗面所へと向かう。洗濯されしまわれていた小さめのタオルを、冷たく無い程度のぬるま湯に浸し固く絞ってから再びリビングに戻ると、相手の傍らに両膝をつき身を屈めつつ「…上脱げる?背中、気持ち悪くない?」と声を掛けタオルを見せて。額に滲む汗から、背中にも、と思っての事。悪夢に魘され発作を起こした時、強い痛みに耐え続けた時、只でさえ倦怠感が纏わり付く中で身体の火照りは不快なものと認識される筈。それが少しでも払拭出来るなら、と )




  • No.5604 by アルバート・エバンズ  2026-04-20 15:48:21 

 




( 洗面所から戻って来た相手の手には水で絞ったタオル。じっとりと背中が湿っている感覚は不快なもので、促されるまま身体を起こすも強い痛みが走るのを懸念している為かその動きにもぎこちなさが残り。身体を起こし、ジャケットとワイシャツを脱ぐと相手に背中を軽く拭いて貰う。仄かにひんやりとした感触、背中に宿った嫌な火照りを拭い去ってくれる其れは、心地良いと感じるものだった。「……あれだけ集まっていると、署員にも迷惑を掛けるな、」ぽつりと呟いたのは、先程の記者たちの事。話題になるネタだと、誰彼構わず自分の事を聞いているのだろう。出勤や捜査に出るタイミングであれだけの記者に囲まれては、無関係な署員たちにもストレスが溜まるだろうと。 )




 

  • No.5605 by ベル・ミラー  2026-04-20 19:01:57 





( 負担を掛けない様に白い肌にタオルを軽く押し当て素早く汗を拭き取ると、再び横になる様に促す。小さく呟く様に溢されたのは自分自身の事では無く署員に掛かる迷惑の話で、こんな時まで他者の事を考えるそれが相手の優しさだがどうしようもなく胸が苦しくなるのだ。半立ちの体勢のまま首を横に振り、真っ直ぐ相手を見詰めた後「確かに大変な騒ぎだけど、迷惑を掛けてるのはエバンズさんじゃないよ。昼夜問わず押し掛けて来る、記者達のモラルの問題。」と、断言して。「…次の休み、少し遠出しない?町から離れれば、多少は気分転換になるかも。」少し思案した後に提案したのはお出掛け。そんなに遠くない、けれどこの空気感からは離れられる場所。そんな所に行けば気分も違うのではないかと思っての事で )




  • No.5606 by アルバート・エバンズ  2026-04-20 19:47:40 

 



( 汗ばんでいた背中の火照りがなくなると不快さは幾らか軽減され、ワイシャツを羽織り直すとソファに横になる。鎮痛剤の効きは鈍く、未だ完全には痛みは消えていない。記者にモラルが無いのが問題だという相手の言葉には、「…そうだな、」とだけ答えて。少し遠出をして気分転換を、という相手の提案は優しいものだったが、今は余り目立った動きをしない方が良いと思っていた。名前も、顔も、テレビや新聞、週刊誌で報じられている今、プライベートなど無いに等しい状況。特に相手と連れ立ってでは、誰かに見られる事で、相手にも嫌な目が向く可能性がある。「_____有り難い提案だが…今は辞めておく。これが一段落したらな、」とだけ答えて、相手の提案を断る。報道が加熱するにつれて外に出る事も減り、1人で籠る事が増えるのは、あの時も同じだった。「…薬の飲んだ、もう1人で大丈夫だ。」と、相手に帰宅を促して。 )





 

  • No.5607 by ベル・ミラー  2026-04-20 20:12:03 





( 騒がしさから遠く離れた場所で少しでも心も身体も休ませて___と思ったが、相手はこの騒動がおさまってからの方が良いと答えた。世間の声を自分の“責任”だからとたった1人で受け抱え込み、周りから距離を取り、やがて心に薄い氷の膜が張りそれがどんどん分厚くなっていき…やがて誰にも…相手自身にもどうする事も出来なくなる。そんな漠然とした不安の目が発芽する様に顔を覗かせたが、今は無理に連れ出すべきでは無いだろうとも思うのだ。「じゃあ…全部終わったら海に行こう。一番天気の良い日に。」と、努めて明るい声色で以て先の話をする。続いて帰宅を促されれば、気持ち的にはこのまま泊まりたいのだが、部屋はこの下。何かあれば直ぐに来れる距離だと素直に頷きつつ「__わかった。何かあれば直ぐに呼んでね、」と、今は相手を1人する事を選び。見送りは大丈夫、と告げてから荷物を持ち部屋を出て。___自分の部屋に戻ってから、考えるのは矢張りこれからの事。日に日に増える記者と報道、そして何もかもを知っていそうな帽子の男。嫌な胸騒ぎがどうしても消えず、暫く布団に入る事無くソファに座ったまま深夜のニュース番組にぼんやりとした瞳を向けていて )




  • No.5608 by アルバート・エバンズ  2026-04-20 21:02:01 

 




( 全てが終わった後、天気が良い日に海に行く_____肩の荷が降りた状態で風の吹く砂浜から青い海を眺めれば、きっと心が穏やかになる事だろう。相手の言葉に頷く事で、その時は一緒に行くと約束して。---相手が部屋に戻ってから、少しの間ソファに横になったまま眠りに落ちていた。監察官から見せられた映像は鮮明な記憶を呼び起こし、夢でもまた、鮮明に繰り返された。ライフルを構える犯人、セシリアの表情が恐怖に染まり、救いを求めるように此方を見る。しかし激しい音と共にライフルが乱射され、次々と教諭や子どもたちが床に倒れて行く_____血に濡れた彼女の手が、自分の靴を掴んだ。そこで意識が一気に浮上するのと同時に、喉に息が引っ掛かった。息が出来ない、と思った。浅い呼吸は酸素を肺まで届ける事が出来ず、喘ぐようにして木枯らしのような音を立てるばかり。ソファから身体を起こせば、また強い痛みが走る。「…っ、は、ぁ゛…っは、」_____何故、薬が効かないのか。どうしようもなく惨めな気持ちを抱えたままソファに手を付いて立ち上がると、壁を伝うようにしてキッチンへと向かう。グラスに水を汲み、安定剤と鎮痛剤をそれぞれ取り出そうと処方箋の袋を手にしたものの、呼吸が苦しく到底薬を飲み込める状況ではなかった。手に当たったグラスが倒れて、床に水が溢れる。自分1人ではどうしようも出来ないと思えば、床に蹲み込み、ようやく助けを求めるべく相手に電話を掛けていて。 )






 

  • No.5609 by ベル・ミラー  2026-04-20 21:24:07 





( ___天気予報が終わり、番組は“今日のニュース”へと切り替わった。何処何処で桜が咲いたとか、スポーツ選手の活躍だとか、そんな微笑ましいニュースの間に“アナンデール事件”の事も報道され嫌でも意識は引っ張られる。時間も時間だし明日に備えてさっさと寝ようとテレビを消し、立ち上がった所でふいにテーブルの上のスマートフォンが振動し、視線を落とせば画面には相手の名前が。部屋に忘れ物はしていない。先程別れたばかりの相手が再び電話を掛けて来る理由はたった1つしか思い付かず、慌てて通話ボタンを押せば案の定、酷く狂った呼吸が電話口から聞こえた。「すぐ行きます!後、数十秒だけ待ってて、」と声を掛けながら電話を切る事無く、部屋の鍵だけを引っ掴み相手の部屋まで階段を駆け上がり。___キッチンの床には倒れたグラスと溢れた水、処方箋の袋から中途半端に出された薬、それから床に蹲り喘ぐ様な呼吸を繰り返す相手。その姿を捉えて電話を切りソファに放ると、そのまま相手を抱き支える様にして背中を擦る。「大丈夫っ、此処に居る。…怖い夢を見たんだよね、」そのまま声が届く様にと耳元で“大丈夫”を繰り返しながら、時折呼吸のリズムを導く様に背を擦る手を、ポン、ポン、と軽く叩くように動かして )




  • No.5610 by アルバート・エバンズ  2026-04-21 01:09:56 

 




( 眠っていたのがほんの数十分だという事にも気付いていなかった。ただ苦しくて、痛みが強く楽になりたい一心で薬を飲もうとキッチンまで向かったのだ。相手の声が直ぐ隣で聞こえて、身体が引き上げられる。背中を摩る店舗に呼吸を合わせようとするのだが、一向にテンポが合わないまま浅い呼吸が唇から漏れるばかり。「…っ、は…ッ、血が……!」譫言のように口にしたのは、自分の足元に広がった血、そして靴を掴んだ妹の白い腕の幻影。鮮明になってしまった記憶が、赤が、脳裏に焼き付いていた。あの距離に居ながら、何も成す術なく無惨にも命が刈り取られるのを見ていた。あの時、数秒の間に咄嗟に動けていたら、何か変わっていただろうか。呼吸は未だ安定させるための糸口を見つけられず、床に蹲ったまま喘鳴が続いていて。 )






 

  • No.5611 by ベル・ミラー  2026-04-21 10:27:30 





( 背中を擦るが狂った呼吸は一向に元に戻らず、浅く吐き出される息は恐らく酸素を脳に届けるだけの役割を果たせていないだろう。譫言の様に繰り返されるのは“あの日の記憶”。今直ぐ薬を飲ませたい程に酷い発作だという事はわかるが、同時にこの発作では薬を飲み込む事が出来ないという事もわかるものだから、先ずは僅かでも呼吸を落ち着かせなければならない。蹲ってしまった相手を無理に起こす事はせず、視線が合わないとわかっていながら、同じ距離に近づける様にして顔を覗き込む。「…っ、エバンズさん、私は誰?、名前を呼んで。」直ぐ傍で苦しげな喘鳴を聞きながら背中を擦る手は止めぬままに、兎に角意識を“過去”から“今”に戻さなければと )




  • No.5612 by アルバート・エバンズ  2026-04-21 12:36:08 

 




( 意識さえ朦朧とするような苦しさの中で、自分を呼ぶ声が近くで聞こえる。相手と視線が重ならず、いつものようにその“色”を糸口にする事は出来なかったが、“私は誰”と尋ねる声に僅か意識が向く。セシリア、と囁くように口にした名前は妹のもの。過去が鮮明に意識を支配していた。それでも、やがて自分を呼ぶ声が妹のものではない事に気がつく。“お兄ちゃん”と、自分を呼ばない声は確かに意識を引き上げる糸口になった。血濡れた幼稚園に囚われていた意識が浮上して、いつか、何処かで見たステンドグラスと若葉色の瞳がちらつく。赤ではなく、別の色が記憶に混ざり始める。海を通り、新緑が流れる車窓。その車を運転しているのは_____「っ、……ミラー、」相手の名前が溢れるのと同時に、少し深く据えた呼吸が肺に届き思わず咳き込む。酷い過呼吸を繰り返した事で胸には痛みが残っていたが、徐々に今蹲っている冷たい床の感覚、背中を摩る相手の手、しんとした夜の空気を感じられるようになり、此処は幼稚園ではないと理解する。呼吸のペースは少しずつ落ち着き始めて。 )





 

  • No.5613 by ベル・ミラー  2026-04-21 13:25:12 





( 相手が最初に口にしたのは妹の名前だった。それならそれで、セシリアの声ならば今の状態でも届く可能性があると言う事。彼女の声を借り“此処は幼稚園じゃない”と安心させる事で意識を今に___と思ったのだが、何かを思い出したのか、その後直ぐに相手が口にしたのは確かに己の名前。同時に喉に引っ掛かる様な頼りなかった呼吸が僅か肺に落ちたのだろう、苦しげに咳き込むその背中を軽く叩きながら「…そう、ミラー。」と、大きな安堵を胸に数回頷いて。過呼吸が徐々におさまった後も、鳩尾の痛みや酷い倦怠感が無くならない事は知っていた。だからこそ無理に動かす事は選ばず一度立ち上がると、ソファに置き去りにされているブランケットを広げ、蹲る相手を包み込む様に掛ける事で少しでも寒さを払拭出来るようにと。「__怖かったね。…もう少し落ち着いたら、温かいものを飲もう。身体が冷えてる。」再び横に座りブランケットの上から背中を擦る。…苦しかっただろうに。そしてその苦しさも、痛みも、過去の記憶も、全て“恐怖”に繋がると思うからこそ、その気持ちを先に言葉にしつつ、それは弱さでは無く口にして良い感情なのだと )




  • No.5614 by アルバート・エバンズ  2026-04-21 16:23:09 

 




( 時間を掛けて、徐々に呼吸が正常なペースに戻る。冷えた身体にブランケットを掛けられ背中を摩られる事で、少しずつ自分が今此処に居るのだという感覚を取り戻す事が出来ていた。監察官からの聴取と、記者たちの追及。ぎりぎりの所で耐える事が出来ていた、一度崩れても立て直す事が出来ていたものが、夜になってバランスを崩した。まだ一連の訴訟は始まったばかり。しっかりと、崩れる事なく両の足で立って居なければならないと分かってはいるが、相手の前では弱みを見せ、救いを求めてしまう自分がいた。「……悪かった、…」そう言葉を紡ぐと、僅かに身体を動かして倒れたグラスを手に、身体に力を入れて立ち上がる。幾らか落ち着いた事に加えて、未だ前の薬を飲んでから2時間も経っていない。今すぐに薬を飲む事はせず、手近にあった付近で溢れた水を軽く拭きゆっくりとした足取りでソファへと戻って。 )





 

  • No.5615 by ベル・ミラー  2026-04-21 17:44:45 





( 紡がれた謝罪は何に対するものだろうか。夜中に再び部屋に呼び戻す結果になってしまった事か、“弱味”を見せてしまった事か、はたまたこの時間の事では無く“此処最近の全て”か。そのどれもを迷惑だと僅かも思わないし、相手が謝る事など何一つとして無いのだが、相手自身はそうは思わないのだろう。首を横に振る事で問題無い事を伝えては「電話くれて良かった。もう一度、隣に居られる。」と微笑みケトルにお湯を沸かし。中の水が沸くまでの間、中途半端に出された処方箋の中の薬を手に取りつつ「薬飲んでおく?」と尋ねる。それは相手が此処数日間も数多くの薬を飲み続けている事を、それがつい数時間前もあった事を知らないからの問い掛けで。安定剤は大丈夫かもしれないが、鎮痛剤は必要なのでは、と薬を見せて )




  • No.5616 by アルバート・エバンズ  2026-04-21 18:11:59 

 




( ブランケットを肩に掛けたままソファに背中を凭れさせ、小さく息を吐く。夜はすっかり更け、しんとした部屋の中に湯を沸かすケトルの音が響く。相手の問い掛けに視線を上げて手にした薬を見たものの、ややして視線を落とす。「……いや、少し落ち着いてきた。今は必要ない。」そう答えたのは、既に薬を多用している罪悪感からか、或いは早いペースで減り続ける薬を少しでも温存しておきたい気持ちからか。落ち着いてきた、とは言ったものの身体には重たい倦怠感が纏わりつき、未だ鳩尾には鈍い痛みが残る。ただ、未だ薬を飲まなくても耐えられるうちは、という自制心が働いて。 )






 

  • No.5617 by ベル・ミラー  2026-04-21 19:07:08 





( 薬を見せた後にグラスに水を___と思ったが返って来たのは想像とは違う返事。確かに先程よりは落ち着いているが、鳩尾の痛みにはまだ耐えられるのだろうかと瞬き。されど必要無いと言う相手に無理矢理薬を飲ませる筈も無ければ、「わかった、戻しておくね。」と、深掘りする事無く頷き中身を袋に戻して。そのタイミングでお湯の沸く音が響けばマグカップに紅茶のティーバッグを入れお湯を注ぐ。透明のお湯に紅が染み出て綺麗な琥珀色が生み出されると、次に冷蔵庫の中のミルクを少し注ぎミルクティーを作り。まろやかな香りを引き連れ、それを相手に差し出しつつ隣に腰掛けては、ややして「…エバンズさん、」と名前を呼ぶ。視線が重なったのならば「ハグしたいって言ったら、嫌?」と極めて穏やかな表情で、小さく両手を広げて。ハグ“して欲しい”では無く“したい”なのだ。今、どうしても )




  • No.5618 by アルバート・エバンズ  2026-04-21 23:43:04 

 



( 薬について、相手が深く言及して来なかった事に何処か安堵している自分がいた。温かいミルクティーの入ったカップを受け取ると、少し冷ましてから口を付ける。喉から胃へと落ちていく熱が冷えた身体を温めるのを感じながら小さく息を吐いて。相手に名前を呼ばれて顔を上げると、唐突な問い掛け。どう答えるべきか悩んで僅かに怪訝そうな表情を浮かべたものの「…嫌、と言うこともないが、…」と、何とも歯切れの悪い返事を返す。拒否するほどの事でもないが、相手の心境もまた分からない。それでも温かなマグカップをテーブルに一度置いた辺り、相手の要望の応える気は多少なりあるようで。 )





 

  • No.5619 by ベル・ミラー  2026-04-22 07:23:08 





( お決まりの怪訝そうな表情には慣れたもの。そりゃあ唐突にそんな事を聞かれればそうなる、と思いながらも一度出した言葉を無しにする事は無く。やがて何とも歯切れの悪い返事が返って来ると、同時にマグカップを置くと言うその動作で此方の要望は叶う事を知る。本当に嫌な時は絶対に拒否するのが相手なのだから。___暫し穏やかな表情のまま褪せた碧眼を見詰め、ややして少しだけを身を寄せる様に座る位置をずらす。それから両腕を相手の背中に緩く回し抱き締めると、片手を後頭部へ。焦げ茶の髪に掬う様に指を通し、小さく息を吐き出しては「……何があっても、私はエバンズさんの味方だからね。」これまた唐突に。そのまま上司相手だとはわかっているものの、頭を撫でる様な手付きで後頭部に添えた手を緩く動かして )




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