ニケの箱庭 ( 3L / 日常 / シリアス )

PF >>12

（　舞踏会での仕来りは酷く煩雑で、けれどもそれを邪魔だと思ったことはない。自身の美をより輝かせられる場が提供されるならば願ったり叶ったりだ。舞踊という場に相応しく整えられたタキシードの襟を正すと、脳裏の自惚れはそののままに話し相手へ向け人好きのする笑みを零して。しかしこの場へ留まってから四半刻は過ぎているだろうか、いくら華美との交わりを好む己とは言えさすがに飽いてきた。眇めた目の奥で薄く存在を主張する眠気を自覚すれば、歓談を楽しんでいた相手に形式ばかりの礼と結句を告げ。ホールでドレスを着て踊る花達を横目に、ひとまず喉の渇きを潤すために食堂へ向かうべく扉を開く。廊下を辿る道中、腕に巻いたワインレッドのリボンをシュルリと解くと口に咥え、歩きながら髪を括るゴムへと巻き付けようと。それなりに存在を主張する長さのリボンは水分補給には邪魔になるだろうと考えたがためで、垂れ下がる布を左手で掬い、肘を後ろへ。つられて自然と上がった視線は長い長い夜の空気を流し込んでくる傍らの窓へと向かい、黒に近い緑のざわめきへと意識を留め。ふと一度後頭部へやったはずの腕を下げ、深い赤の布を片手に掴んだまま、何気なく窓辺へと寄る。庭園の姿を枠に収めるこの窓は一体誰が開けたのだろうか。多少ぼんやりとしながら横の壁に身を預けるようにして外の光景を覗き込み、独り言ちて　）……もうすぐか、俺。

（／参加許可ありがとうございます！絡み文を提出させて頂きますので、宜しければ是非何方かとお話させていただきたく…！お手隙の際にでも声をかけてくださると喜びます…！）