夜が明けるその前に　（〆.）

･･･なに、喉･･･？仕方ないな･･･。

(相手の体温と布団の暖かさで気持ちよく睡眠を貪っていればシーツが擦れる音と人が動く物音がして少しだけ意識が覚醒する。だが頭の中はまだ靄がかかったように朧気で目を開けていても現実味がなくぼんやりとしていた。そこで相手から眠そうな声のまま喉が渇いたと強請られ寝ぼけた思考のまま血が飲みたいのだろうと判断すれば相手の頭に手をやり緩く体に押し付け、吸血を促して。既に自分の瞼は再び閉じていてほぼ意識は夢の中に入っていたので完全に寝ぼけていた。)

ほら、喉渇いたんだろ･･･飲んでいいぞ･･･。

…このままだと、布団が酷い事になる。

（眠たげな相手の声と共に首筋に促すように頭を寄せられるとようやく目を開いて。相手はまだ寝ぼけているようで半分眠っているような状態だったが、そんな時でも許可を出してくれた事に自分に血を与えると言うことが相手の中で徐々に日常的な事として馴染んできているような気がして嬉しかった。その事で機嫌が良くなり目を覚ますと、上半身を起こして眠っている相手の顔を間近に覗き込み、さすがに横になったままでは一帯が血の海になりかねないと冗談めかして笑いながら相手の首元に触れるだけのキスをして。彼が目を覚ましたら、有り難く頂く事にしようか。）

(結局はあのまま寝てしまって、首に何かが触れるような感じはしたがそれが何かと考える前に意識は深い所にに落ちてしまった。
しばらくして意識を浮上させたときには隣に相手の姿は見えずどこに行ったのだろうかと不思議に思いながら体を起こし足裏を床につける。太ももに腕を置いて体を支えていれば小さく欠伸をして目を擦る。次第に頭の中が覚醒していけば微かにシャワーの音が聞こえて浴室に行っているのが分かると体を起こして相手が帰ってくるのを待って)

おはよう、テオ。

（シャワーを浴び終え新しいシャツに袖を通し濡れた髪を拭きながらリビングの扉を開けると目を覚ましたらしい相手がベッドに座っていて、声をかけて。相手に髪を拭いて貰おうと頭にタオルを被せたまま相手の隣に腰掛けると、普段自分より早く起きている事の多い相手が今日は珍しくゆっくりしていたようだと揶揄うような口調で言いながら、機嫌良さそうに笑って。）

僕より遅起きなんて珍しいね、お寝坊さん。

ん、おはようクラウス。

(ガチャリと音を立てて入ってきたのはやっぱりシャワーを浴びたあとの相手で髪を濡らしたままおはようと言って隣に座った。機嫌良さそうに笑いながら揶揄ってくる相手に、自分もおはようと返すと手を伸ばしてタオル越しに相手の頭を撫でるように髪を乾かした。昨日調子に乗って少し多めにアルコールを摂取したのと寝るのが遅くなってしまったから深く眠ってしまったのだろうと推測すればそれを相手に伝えて。暫く拭いていれば、どこか濡れた犬の毛を乾かすような手付きになってしまいつつも乾かすことが出来て満足そうに)

まぁ、昨日は酒飲んだしな･･･仕事終わりだったし余計によく眠れたんだろ。･･･よし、できた。

それもそうか、…ん、ありがとう。僕が朝言った事、覚えてる？

（確かに相手は昨晩仕事の後にアルコールを摂っていたし、少し夜更かしまでしたのだから眠りが深くなるのも当然だと頷いて。犬の毛を乾かすような手付きに目を閉じてじっとしていると程なくして相手の手が頭から離れ、あちらこちらにと乱れた髪を軽く振って手櫛で整えると耳にかけてお礼を言い。タオルをベッドに置くと、今朝のやりとりを相手は覚えているだろうかと相手の首筋を指先でなぞりつつ首を傾げて尋ね。）

どういたしまして。
･･･朝･･･？、･･･たしか、喉が何とか･･･悪い、あまり覚えてないな。

(髪を手櫛で直す相手はタオルを置くと手を伸ばして首筋をなぞってくる。それを擽ったく感じつつなんだろうと考えていれば朝言ったことを覚えているかと尋ねられ首を傾げてしまった。朝、と記憶をたどってみるが鮮明な記憶はなく、朧気だが布団の中で喉が･･･と自分に伝えてきた気がする。が、それ以上思い出すことは出来ず謝罪をし、素直に覚えていないことを告げて)

俺、クラウスと何約束してたんだ？

喉が渇いた、って言ったんだよ。

（眠っていて意識も朧げだったのに相手は自分に吸血を許可した、それだけ自分を信頼してくれている証か、それとも少し寝惚けていただけで牙を突き立てれば驚いて目を覚ましただろうか。どちらだったとしても、理性を失い相手を危険な状況に陥らせた前科があるというのに自分を拒絶する事なく、側に置くどころか吸血さえ赦してくれる事が嬉しくて目を細めると朝の約束を伝えて相手の頬を撫でて。まだ身体が酷く辛い訳ではなく理性を失うようなことはない筈で、少しだけ相手の血を貰っても良いだろうかと尋ねて。）

…少しだけにするから、良い？

なんだ、その事だったのか。それなら全然いいぞ。

(寝ぼけていてあまり覚えていなかったのだが何かを自分は承諾したらしく、それを聞いてみれば吸血に関しての約束でなんてことないのが分かった。以前のような辛さから強請った訳ではなさそうで少し安心して微笑んで。相手にとって吸血は食事と同じことなのだからと理解しているし、拒否することなく頷けば体を少し動かし相手と向き合うように変えると腕を広げて受け入れる体勢を示して。)

…朝もそう言ってくれた。本心だったんだね、

（相手の返答は寝惚けながらの時と変わらないもので思わず微笑むと、やはり相手は吸血を普通の事として受け入れてくれる程に自分に心を許してくれているのだと実感して嬉しそうに相手の頬にキスを落として。吸血鬼に襲われて運良く生還した者は誰しも口を揃えてもう二度と体験したくないと言うはずだ、牙を突き立てられ身体から血が失われていく感覚は恐ろしいと。いつか相手は、それさえも承知で一緒にいるのだと言ってくれたがその言葉に、こうした普段の振る舞いにどれほど救われているだろう。腕を広げてくれた相手に近付きシャツの襟元を寛げると自分を誘うような相手の血の香りが濃厚になる気がして、一度首筋に軽くキスを落としてから噛み付いて。）

寝てる時も起きてる時も、お前にはいつも本当のことしか話してないよ。

(やはり自分は寝ぼけていても相手の要求は快く受け入れていたらしい。相手も満足気で頬にキスをしてくれると正解を言い当てたご褒美のように感じてしまう。無意識下でも同じ返答をしていたことを相手から聞くと頬が緩んでしまい少し恥ずかしい気もしたが、吸血するために近寄ってきた体を抱きしめる。吸血するまでの準備のように首筋に口付けられると、擽ったい様な感覚になるが自分から余計な力が抜けて刺さる牙の痛みが前よりも少ない気がした。自分の血が少しづつ抜けていく感覚と、嚥下する音を感じながら満足するまで相手に身を任せていて)

…そうだったね、ごめん。嬉しいよ、テオ。

（確かに相手の言う通り、どんな時でも相手は嘘を吐いたことはないしその場凌ぎの言葉を口にしたことも、約束が後で覆ったことも無い。その通りだと頷いていつも自分を想ってくれている相手と視線を合わせて微笑んで。久しぶりに口にした相手の血はやはりとても甘美で、少しの量でも喉を潤し身体を楽にしてくれる。しかし吸血を始めてしまうと相手の血でもっと自分の身体を満たしたいという欲が沸き起こり首筋に突き刺した牙に僅かに力がこもったものの、理性を飛ばすまでには至らずそっと唇を離して。飢餓状態だったとしても自制さえ出来るようになれば相手を危険な状況に陥れるリスクはかなり低くなる筈だと思いながら、血の付いた唇を舐めて。）

･･･はは、それすごくセクシーだな･･･結構好きだわ。

(あまり血を吸われることはなくそっと離れたもう大丈夫なのかと少し心配になるが、顔色は悪くないので安心をして。吸血時に血が唇についたらしく、唇を舐める動作を目の前でやられるとぞくりとした興奮が背筋に走る。自分の血が相手に飲まれたなんとも言い難い興奮と、相手の動作が色っぽく笑みが溢れると相手の頬に手を添えて親指で口の端を撫で目を細めながら好印象だと告げて)

…ふふ、興奮した？君の血は一滴も残したくないんだ、

（相手の言葉を聞き既に紅く染まった瞳で相手を見つめ返すと柔らかくも艶やかな微笑みを浮かべて首を傾げ。頬に添えられた手が口の端を撫で、こちらを見つめる相手の瞳に僅かばかりの熱が籠っているのを見て態とその熱を煽るように顔を近付けて微笑むと、相手の身体を流れる甘美な血はほんの一滴たりと残したくないのだと声を顰めて相手に伝え、相手の唇に触れるだけの優しいキスを贈り。）

ふは、そうか。･･･あー、ほんと、お前に血飲まれるのハマりそうで怖い。

(紅い瞳と艶やかな笑みに煽られて体の熱がグツグツと煮えたぎるようで勝手に口角が上がっていく。煽るように間近で微笑まれ、顰めて言葉を告げられ熱の篭った息を吐き出し熱を冷まそうとしたが、優しいキスが贈られて逆にまた熱が煽られた気がした。きっと口内は血の味がするだろうからという相手の配慮だと思ったが煽りに煽られ我慢できず、相手の唇が離れた瞬間頭を引き寄せ自分から口付けた。不意をつかれたような相手の顔が至近距離に見え、目が弧を描くと僅かに開いていた隙間から舌を差し入れ絡ませて)

そんな事言う人初めてだよ。中毒性でもあるのかな、──！

（相手の言葉に一瞬きをして相手を見つめていたものの少ししてその意味を理解して、吸血鬼を前にして吸血される事にハマるなんて言ったのは相手だけだと愉しそうに笑って。恐れられ、命乞いをする声ばかりを聞いてきたというのに、目の前の相手はそんな過去も忘れさせてくれるくらい温かい人間だ。麻薬のように血を飲まれるのにも中毒性があるのかもしれないと冗談めかして笑みを浮かべると、不意に頭を引き寄せられ目を丸くする。舌を絡め取られ、まだ血の味が残っているだろうと思いながらも受け入れるように目を伏せると相手の背中に腕を回して小さく吐息を溢し、深いキスを堪能して。少しして一度唇が離れると熱っぽい瞳で相手を見つめ、揶揄うような笑みを浮かべて。）

──…興奮作用もありそうだね、

（/ 一応なんだけど、僕の背後が調子に乗って返してる返事が過激だと見做されて規約に引っ掛かるといけないから、下げ進行にしておいた。念のため、ね。テオがあんまり格好良くて耐えられなくなりそうだ。）

今はまでのヤツらとは相性が悪かったんだろ。･･･でも俺に効果あるのはお前だけだよ、クラウス。

(暫く相手との深いキスを堪能して満足すると唇を離して相手を見つめる。こちらを見る目には隠せない熱が灯っていて、それを自分がさせていることに興奮した。中毒性や興奮作用があるのかもと揶揄う相手に喉の奥で笑うとこれまでの相手とは相性が悪かったのだろうと、それでも自分がこうなるのは相手の行為のみであることを口に出す。そして最後に相手の唇を撫でるように軽く舌を這わると満足気な様子で歯磨きをしてくると伝えて)

飲まれた後にキスするのは良いが口の中血の味するのは難点だな･･･。早く慣れるようにするか。


(/気遣いサンキュ。こっちこそクラウスの色気とかに爆発しそうだわ。背後も背後で毎度描写が神すぎてやべぇ･･･とか呻いてるし。色々ありがとうな)

…嬉しい事を言ってくれるね、テオ。

（これほど気分を煽られるのは自分けだ、なんて。いつも彼の紡ぐ言葉は何と甘美な物なのだろう。熱の浮いた瞳も表情も、息を継ぐのが困難な程の深く甘いキスも、知っているのは自分だけなのだという満足感と高揚感が湧き上がり思わず頬を緩めて返事をして。唇が離れ相手の顔が遠ざかっていく事に一瞬の寂しさを覚えたものの、歯を磨いて来ると言う相手の言葉に吹き出しては、だから触れるだけのキスにしたのに、と言いながら。舌を入れてきたのは相手だから今回は自業自得だと愉しそうに笑うと、リビングを出て行く相手を見送って。）

…ふは、ほらね。だからあれだけに留めておいたのに。今回は君が悪いよ。ん、行っておいで。

（/ それは良かった。どちらの背後も同じ状況ってことだね、お互い様だ。やり取りを重ねる毎に一層君が愛おしくて堪らなくなっていくし、もっと知りたいと思ってしまう。いつも付き合ってくれてありがとう。）

あぁ、ちょっと行ってくる。

(口の中で血の味がするのは自業自得だと笑う相手に、自分もそうだなと笑えば軽く手を振ってリビングを出て洗面所に向かい。軽く口の中をゆすいでから歯ブラシで磨けばミントの刺激と匂いが口の中に広がって体の熱が冷めていくようだった。相手に感じていた興奮や高揚感も静まっていく感じがして落ち着いてきた。口をゆすぎ顔も洗えば顔を拭いてリビングに戻り、相手にただいまと声をかけて)

僕のかけた魔法は解けたみたいだね、

（コーヒーでも淹れようかとキッチンに立ちお湯を沸かしているとリビングの扉が開き、戻ってきた彼は身体の中に篭っていた熱が消え普段通りの様子に戻っている気がして冗談めかしてそう言って。2人分のカップにお湯を注ぎスプーンで混ぜながら、自分は今日は仕事が無いが相手は何時頃から任務だろうかと尋ねて。食事を摂ってから出掛ける日もあれば、昨日のように食べずに出かける日もあるため今日はどちらだろうと。料理は苦手なため手伝うくらいしか出来ないが、仕事に行く相手が少しでも楽になるように手助けがしたかった。）

…僕は今日休みなんだけど、テオの任務は何時頃から？夕食はどうしようか。