管理人。 2021-01-29 15:12:00 |
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>49 修さん
そうですね。ゆっくりしようかなと思います。
( 声を掛けてきたのは見るからに老人。この町が出来てから長く経っていないとしても、他の住人より警戒されずに情報を得ることができるだろう。無駄な馴れ合いをするよりも、適切な距離感を保って手っ取り早く色々知ることが出来れば良い。町に隠された秘密を、人々が抱えるものを。彼の言葉に微笑んで頷いて、そのまま頭を下げてから立ち去ろう。そう思ったが、此処で何も聞かずに終わるのも勿体無い。地図を見て歩いたところで、よくわからないまま動き回るのはあまりにも効率が悪い。勝手知ったる人間がいるのは心強いし、何より話を聞き出せれば一石二鳥。先達はあらまほしきことなり、なんてよく言ったものだ。「有り難う御座います。では、お言葉に甘えてお願いしても宜しいでしょうか……ああ、申し遅れました。私は楸と言います」胸の前に手を置いて、紳士然とした振る舞いをしてみせる。普段からしているわけではなく、しっかりとした若者、という印象を持って貰う為に。もし外の世界と繋がりがあったら厄介だ、珍しく目立つ本名をすべて名乗ることはしないけれど、下の名前だけは口にする。最低限の礼儀くらいはきっちりとしておかなくては、非常識のレッテルを貼られてしまうかもしれない。いくら一時的に留まる場所といえど、嫌な奴がいた、と悪いように記憶されるのは御免なのだ。「此処は自然が豊かなんですね。空気も美味しい気がします」辺りを見回しながら、当たり障りのないことを話す。単純な興味と、場を繋ぐ言葉。さて、此処からが本番だ。ちゃんと演じきらなくては。心の中でそっと気合いを入れた。 )
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