誰かの残した手記 2020-12-07 02:07:08 ID:9c1004cee |
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―異様な程の濃さの濃霧、そしてそれに畳み掛けるが如く延々と遠くまで、漂い、舞っている細やかな灰の粒子。
それらが織り成す視界不良は、まるで意図的にこの中で繰り広げられているこの世の物とは思えないような悪夢の数々を覆い隠すかの様にすら思えてしまう、少なくともその只中に故意にせよ不本意にせよ(飲み込まれ)た全ての者にとっては
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【BAR・アシュリー(店内)/ダグラス、ジム】
(カンカンカンと板切れをドアに、窓に、一心不乱に打ち付けていく音――昔ながらのレイアウトの古びたBARに、命からがら駆け込んできた二人の男が、彼らが其々(追って来る)、何かに対して備える様に即席のバリケードを拵えていく。―――十数分ほどでそこそここの酒場の守りを固めた後、二人の男の内の片方、やや猫背気味の地下鉄職員の制服と帽子を被った黒人系の若者…ジム・チャップマンは緊張の糸が切れた様に、バリケードを背にへたり込む様に座り込んで悪態をつく。)
ジム「畜生め! ジーザス! なんだって、こう、“立て続け”に、こう、なん、だ、ろう、なぁっ!」
(一方、もう片方の白人の壮年の男、火事場から着の身着のまま逃れた、しかしそれですら割かしサマになっている様なノワール物の無頼めいた私立探偵の彼、ダグラス・カートライトは即席のバリケードを築き終えるなり、酒場のカウンター、カスタマーエリアからバーテンの立ち位置辺りに歩み寄ると、何やら物色し始め…目当ての物を見つけ出す。治安が悪いのかどうかは不明だが、大体暴動めいた諍い事の現場になり易いこの手の場所ではトラブルメイカーや暴徒やらから客と店を守らなければならない事が多く、直ぐ手の届く場所に――あった)
ガチャ
ダグラス「ツイてる。」
(カウンターの裏に備えられていた支え、そこに掛けられていた比較的短銃身の12ゲージのポンプアクション式ショットガン、フォアエンドを軽く引いて状態を確認し、続いて取り出したショットシェルの入った厚紙箱を取り出すと、数発無造作に握って取出し、慣れた手つきで装填し、ポンピングする。」
ジャゴッ!
ジム「……本当にツイてたら、あんな奴らに追われてこんな所に立て篭もったりしてないよ。」
ダグラス「外で生きたまま貪られるよりは幾段かマシだと思うが?――逃げ場があっただけ幸運だろう。」
ジム「贅沢を言ってるつもりはないんだけどね?オレとしては…」
そんな微妙に噛み合わないやり取りをしながら―――二人の男は、片や不安げな視線を、片や険しい視線を、この得体の知れない街の得体の知れないモノが蠢めいているであろう濃霧へ向ける。
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