天からの瞳 2020-12-02 21:07:16 ID:50710ba8b |
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(/投下します、よろしくお願いします)
【使用キャラ:黒い骨のエメリィ(>5)】
この世界に流れ着く旅人達に老若男女の偏りは存在しない、人種も文明も、常識すらも。
流れ集った混沌は混ざりあった末に一種の秩序を得て、ユノアという「塔」と「壁」と「天井」の世界に、新たに「街」を作り出した。
それがもう、十年以上も昔の話である。
ある世界から来た人々にとっては「ちゅうせいよーろっぱ」風と評されている古めかしい街の昼下がり、整備された石畳の上をトコトコと駆ける小柄な人影がある。
清潔な衣装はどこか良家の使用人が身につけていそうな物であり、露出した白磁色の肌と対照的な黒、髪飾りと髪に僅かに混ざる赤色が差し色の役目を果たしていた。
「人造人間(ホムンクルス)」の少女、エメリィがそうして街を駆けているのはいつものことで、いつもその様に何処かに困っている人や新たにやって来たばかりの旅人がいないかを探しているのだ。
ふと向いたその視線の先に、自分の身体程もある大きな鞄を背負いゆっくりと坂道を上る老婆の姿が。
「お婆さん、お婆さん、荷物をお持ち致しますよ」
「あらあら、ありがとうねぇ……大丈夫かい?」
この世界に流れ着く旅人は本当に分け隔てが無い、例えば今エメリィが助けようとした、塔の探索になどとても赴けそうに無いごく普通の老婆も旅人の一人である。
大きな鞄を代わりに背負いなおし、心配されながらもゆっくりとゆっくりと歩き出した。
とはいえエメリィが然程力に優れている訳でも無いので、老婆が背負うのと歩行速度に大きな差は生まれなかったが。
それどころか、エメリィの小柄に鞄の大きさはアンバランスで、傍目には今にも圧し潰されそうになっている様に見えるかもしれない状況だった。
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