極彩の魔女 2020-09-18 15:38:35 |
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>>シリウス姫(>>188)
(背後から指摘されて初めて、手慣れた動作のままに薬棚を漁った事を後悔した。手当てや応急処置に不自然なほど精通している理由は決して人に言えたものではなく、諦めたように溜息を吐いて「 別に、慣れてるだけ。――僕らは怪我の多い兄弟だから 」普段は兄か弟の傷しか診ないため油断してしまった、素直に自身の浅はかさを受け入れつつぽろりと暗い思い出の欠片を落としてしまったのは、彼も同じく魔女の暗い企みから生まれた" 姫 "だからなのだろうか。縮こまった手に視線を落としたまま数秒の沈黙。肉を裂き骨を砕く事も難くない、見るからに命を刈る事に特化したその爪が、ひどく甘美なものに思えて仕方がない。「 君が切り裂いたのは僕だろ、どうして父上や兄さんに謝るの。 」冷たい氷に一筋の罅が入るような、微かに震えた声。俯きがちな表情はとうとう窺えないまま、感傷を振り払うように鋭く息を吸ってから顔を上げて「 僕に触られるのが嫌ならそう言って。無理強いはしない 」手にしていた薬や包帯をサイドテーブルに置く、コトリとした小さな物音が部屋の静寂を揺らして)
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