極彩の魔女 2020-09-18 15:38:35 |
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>186 リヒャルト様
(真っ直ぐ進めていた歩を止めたのは、返ってきた言葉が静かな冷たさを纏っていたからで。王族として、人としてごく当然の行いを大仰に持て囃された所で窮屈でしかないのだろう。彼のような人格者ならば尚更。一瞬生じた躊躇と違和感を知らず知らず好意的な解釈で塗り潰し、無駄口を塞いだまま足早に医務室まで追いつけば、手際良く薬棚を漁る皇子の姿に目を丸め「 ……殿下は医術にもお詳しいんですね 」感じたままを心底不思議そうに零してしまいつつ、体は従順かつ忠実に傍らの椅子へと腰を下ろす。未だ残る緊張から普段以上に背筋を伸ばして主君の一挙一動を見守るが、ふいに真正面から向き合う形になると臆するように身を引き、次いだ言葉に驚くあまりさっと腕まで引っ込めかけて「 しかし、」続きを口に出来なかったのは有無を言わせぬ眼差しのせい。月明かりの下で見るよりずっと鮮やかなスカイブルーに小さく息を呑み、そろりと手を差し出すもその指先は遠慮がちに曲がったままで「 殿下がお優しい方だという事は十分存じております。ですが、あまり近づかれないほうがよろしいかと……ご尊顔に傷をつけてしまうような事があれば、国王陛下や兄君様に何とお詫びすれば良いか、 」猫すら怯えて逃げ出すほどの化け物じみた獣の爪。皇子の白い肌など掠めただけで裂いてしまうだろうと気が気ではなく、浮ついた緊張と真摯な不安が入り混じる奇妙な心地で眉を下げ)
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