着ぐるみパンダさん 2020-08-02 17:23:34 |
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(先の交戦に乗じて潜入するような輩は……流石にいませんか)
ゆったりとした歩調で城の外周を練り歩き、不届き者がいないか目を光らせる。
鍵のかかった自室という安らぎの空間を抜ければ、ゼクシア・ファルベは帝国お抱えの一戦士と化す。
その顔付きからは微睡みの色が消え失せ、幼くして修羅場を幾つも潜ってきた狼の相貌が張り付いていた。
「!」
角を曲がろうとした丁度その時、視界が何者かによって遮られる。
咄嗟に飛び退き臨戦態勢を整えてしまうのは忌まわしい過去故か。
しかしそれも、目の前に現れた人物を認識した途端にすぐ解除された。
「ああ、ステラ様……大変失礼致しました。差し支えなければお持ちしましょうか?」
視界を遮った人物――ステラ・カンパニュラは帝国参謀官が一員だ。
正統な軍人かつ階級・年齢共にゼクシアより上に位置するため、自然と畏まった物言いになる。
参謀室で日々業務をこなす彼女が運んでいるとなれば、その書類の中身は作戦要綱などといった軍事機密の可能性がある。
あくまで一戦士に過ぎない身分で覗き見るというのは気が引けるため、勝手に引き受けることはせずに伺いを立ててみた。
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