ストーリーテラー 2020-07-15 23:39:22 |
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>>アッシュ
(魔法使い、という言葉に一瞬己の顔が強張るのが分かる、あまり、いい思い出は、ない、魔法には。ちくりとした痛みと、落ちていく眠りの深い罠…拭い去るように首を強く振って乱れた髪もそのまま「紅茶、好き」と短い返事を唇に乗せる。浮いたポットも踊るように並んだ椅子も、何を恐れることがあるだろう。だって、ここには糸車はない、怖い怖い物語はここにはないのだ。親切を仇で返すような真似は好ましくないでしょう…とと、椅子へと足を向ける。眠るプリンセスとその傍で目覚めを待つ魔法使い…知った顔が目覚めた時に隣にあるだなんて、なんて羨ましいことだろう。羨望にも濡れた本音が、つい口をついて)
…王子様が一緒では、ないのね
>>アルディス
うん…あなたが脚があることが素晴らしいと思うよう、私は、
(眠ってばかりの己にとっては当たり前の脚を見下ろして…それから微笑みを浮かべたお姫様を見る。あなたが脚を望む通りに、己は目覚めを望んだ…手に入ってしまえば三日で慣れるだろう、それでも手に入らないそれは永遠に…ハッピーエンドの為の鍵。「ここ、入ってみようか」と手近な扉に手をかける、中に何があるのかなど怖くはない、起きていられれば、人魚姫の脚があれば…ここはハッピーエンドだ)
>>アリス
うん、うん、そう、一番に出会った人ってどうしてか頼りに思えてしまうものね
(慌てた助け、小さな船をひっくり返したかのよう。普通などどの世界にも有り得ずに、幻…それこそワンダーランドにありそうなものだと言うのに、その素晴らしさを並べるのか、不思議な少女だこと。くっくっと面白い物を見つけた幼子のように笑っては、眠っている間にすっかり鈍ってしまったフォローの言葉を返すように言葉を選び…進むばかりの廊下の先はまだ長い)
>>クライヴ
…どうして、
(眠り姫の探し物は、眠り姫にとってのハッピーエンドだったのかもしれない。眠りに落ちず、信頼のおける執事と共に毎日を当たり前に過ごすだけ…それだけ。そう、御伽噺は甘くないから。鼓膜を揺らした明るい声が、王子様のプリンセスを語る。プリンセスは歩けない…?それは、もし、ここに来ているとしたら、少しばかり心細いのではなかろうか?横目に片方だけの金色を見上げ「…ねえ、どうして少し嬉しそうなの。歩けないのなら、早く探してあげないと」途中で止まった声の続きを舌に絡め。早く歩く為、絡めた腕を外すように力を抜き、)
>>ミヒェル
知りもしない王子の愛も、怖い魔法もないのよ…ねえ
(背後で、全てが閉じる音がする。物語のページを破って捨てるようなこの場所で、執事はきっと、今度こそ傍にいてくれる…今度こそ?ううん、違う、だって、眠りに落ちる前も落ちた後も傍に…あれ?あなたはどこにいたっけ。少しずつ、脳内で繰り返されるこの問答に飽き飽きし始めるほど、あの物語が終わる前にも、王子様のキスを何度も受けながら、吐き気のする愛の言葉を囁かれながら…そんなことを考えていた気すらする。「もうあの時みたいに眠らないの。王子様もミヒェルの助けなしでも起きられるようになる…素敵なハッピーエンドでしょう?」だなんて、廊下をゆったりとした歩調で歩きながら。今度こそ、結末を己の手で手繰り寄せられる筈の眠り姫の首には確実に鎖が巻き付き始めているのに)
>>ヘンゼル
(雨が降る前のような表情に太陽の光が差す、まるで雨の気配が嘘だったかのように。「偉いね」とその気丈な振る舞いを褒め、渡された挨拶に己も膝を僅かに折り頭を垂れた。お転婆で、少しばかり乱雑な言葉ばかりを並べる己、それでも少しは…見てくれだけは、優雅に。森に妹と住むという少年は…そうだ、この聞いた事のある名前は、きっと、あの日、森でお菓子の家に招かれた少年なのだ。とすれば、己の挨拶も決まっている。垂らした頭を僅かに上げ、微笑みを浮かべては)
私はリープ。糸車で眠りに落ちた…私の物語り、聞いた事あるかな
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