ストーリーテラー 2020-07-15 23:39:22 |
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>>リープ
(目の前には同じ金色が、しかし自分のそれよりも遥かに綺麗な瞳が右往左往するのをじっと見つめる。指が襟元に行きかけるのを、拳を固く握ることで押し留めた。浮かびかけた憔悴をどうにか心の奥底に押し込めて、いつもの仏頂面を取り繕う。その瞳が、ちらりとこちらを伺った。鏡で毎朝確認している自らの目とは、やはり違う。改めてそれを思い知り、密かに落胆する。いつもより無防備な格好をした彼女が安心しきったかのような、喜色を孕んだ声色で自分を呼ぶのを聞いて、やはり自分が守ってやらねばならぬのだと固く決意した。彼女の僅かな動向で揺れる裾、瞬く度に知れるまつ毛の長さ、夜空で一等美しい星のような瞳。今日は少しだけ寝癖のついた、なだらかな白髪さえも愛おしい。自分と彼女以外には何もいらないと言わんばかりに、蕩けそうに目を細める。そこで彼女が何かに焦ったように、借りてきた猫のようにしゃんと背を伸ばしたのを見た。そこでようやく自分がなんの返答もしていないことに気がついた。彼女を眠らせたあのときの悲痛な思い、眠り続ける彼女への愛と苦悩、罪悪感に苛まれた日々を回想しながら苦々しい気持ちになりつつ、できるだけ柔らかい口調を心がけながら、諭すようにして話し)
「お嬢様、私はお叱り等致しません。ですが、貴女がもし暴漢にでも襲われていたら、攫われてしまっていたら。また、……眠らされて、しまったなら。私はもう二度とそんなことは考えたくないのです。わかっていただけますか」
(/背後より失礼します。とてもお早く素敵な返しを頂いたのに、お待たせしてしまってすみません。ありがとうございます。
いいえ、いいえ!そんな滅相もないです。こちらこそ、背後様のご期待に添えるような紳士には程遠いことと存じます。それでも精一杯努めさせていただきますので、こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!)
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