あ 2020-05-21 09:59:00 |
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>如月さん
「……誰も、救えてなんていませんよ。」
(ぽつり、と。その言葉は零れた。)
「僕は、そもそもが……この微動だにしない顔のせいで、誰も近寄っては来ませんでした。学校でも、社会でも……育てられた、孤児院でも。」
(ここに来るまで……他人との関わりは、どれも結果的には悪いものばかりだった。)
「……別段、虐げられていたわけでもありません。別段、不幸な思いをしたわけでもありません。……ただ、当然のように扱われただけです。誰にも心から悪気なんてなく、誰も悪くなく……ただ、感情を表せないから、と。」
(……感傷に浸るのは、いままで自分が体験してきたこと。大切だった誰かを失ったわけでもない。やり遂げたかったことを選べなかったわけではない。決して、不幸な人生ではない。)
(ただ、大切なものがそもそもなかっただけ。やり遂げたいと思ったことがなにもなかっただけ。……不幸ではないが、幸せとも呼べない人生。)
「……まぁ、そんな自分だから、誰かには笑ってほしいわけなんです。……人が笑えば、誰かもつられて笑います。そしてそれはどうか、誰かの不幸のもとになりたつものではなく……幸福が幸福を起こすような、人に連鎖するものであってほしいと……切にそう思うだけです。」
(それが、空という『大人』。……もっとも、それが空の全てではないが……。)
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