司書 2020-03-22 13:34:22 |
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>>1222 ノア
ああ、似合っている。そんなに気に入ったなら外に出た甲斐があったな。
(返されたブレスレットを眺めながら、先程までの強欲さと打って変わった彼女の態度に少し思考を巡らせて……ブレスレットを腕にはめ直す。鮮やかな色合いの輪っかは、彼女の言う通りイメージに合わないし、目立ちすぎる。だからこそ牽制には打って付けだったのだ。しかし、彼女がそこまで言うのなら、押し付けるつもりもない。それにしても、彼女が自分の選んだものを「元気になれる」とまで言うのは意外だった。嬉しそうにブレスレットを見つめる彼女の表情は喜色に綻んでいる。誰と行くかで星の見え方が変わるように、彼女も自分のためにプレゼントされたという付加価値を気に入っているのだろう。センスの悪いものなど贈る気は毛頭なかったが、熱烈な褒め言葉にどこかくすぐったいような、ぬるいオアシスに足をつけたような、奇妙な居心地の悪さを感じた。それを表に出すつもりはなく、代わりに目元をわずかに細めるだけで、すぐに近づいてくる店員の方へと視線を逸らした。記念すべき彼女の初注文が届いたのだ。シャツの襟を手で摘んでほんの少しだけ整えると、テーブルに宝石のように光を反射するゼラチンコーティングされたフルーツタルトが置かれた。なるほど、女性がはしゃぐ訳だと自分のブレスレットに負けず劣らずのカラフルなタルトに感心したように片眉をほんのわずかに上げてみせた)
――ほら、初めての注文ができた記念のケーキが来たぜ。
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