No title（〆）

あらそうですか。でもどうせよく言われてるんでしょ？（さらりと軽口を叩くも、続く言葉には目から鱗とばかりに見開きつつ頷いて）あー、そう言う手もありましたか。素直に思い付きませんでしたわ。俺は感染さない様に感染さない様にってそればっかり考えてましたけど、そう言やこの人俺のだった。（夜道を走ると爽快感が胸中に広がり表情を綻ばせ。不意に手に圧が掛かり捕らえられ、体が宙に浮けば笑い声を立てつつ愉しげに相手の首に腕を回し、ちゃっかりと歩く意思を放棄して身を委ね）あははっ、オッサン同士の鬼ごっこだクソウケる。64キロの男を持ち上げるお気持ちはいかがですか？…つーか俺も甘やかされるとか小学生振りですし。お互い初心っすね。

…いんや？面白いとかはまぁ人並みに言われるけど、その程度。(思い返して緩く首を傾げては、続く言葉には頷きさも当然かのような口調で)そ、俺は悠チャンのだし、お前の好きにして良い訳よ。だからさぁ、そん時くらいは頼ってなぁ。(腕に感じる重みに垂れた目尻を更に下げては相手の腕が首に回ったのを確認してから自宅へと歩き。耳に痛い単語を拾っては苦い顔をしつつ)おいコラ。20代半ばはオッサンっつー表現されるのにセンシティブなんだからヤメナサイ。…え、マジかよ俺と10キロも違う訳？筋肉つけろ、筋肉。…ハハ、まぁ悪くねぇわな。あ、俺の場合ココにやってるみたいにやりゃ良いのか。

へー、皆オブラートに包むの上手えなぁ。…あははっ、よくも恥じらいげもなくそんな台詞言ってくれますね。それなら俺も浩二さんのものですし、思った事とか願いとか、何でも聞かせてくださいよ。約束。（紡がれた句に惚れ直したとばかりに恍惚と横顔を眺めながら頬に手を添えては、自身の重量を意に留める事もなく夢見心地に。相手の自宅が目前になると漸く腕を軽く叩き呼び掛け）そろそろ歩きますわ。良く運んでくれましたね、サンキューです。薄々気付いてたんですけど、浩二さん結構力ありますよね。…なーんか猫様と同じ扱いされんのも気が引けるし、普通に帰って寝ましょ。

おー、どーゆー意味だコラ。…そりゃデレッデレを御所望みたいなんで？…ま、でもそうだなぁ。俺もちゃんと言葉にしてくわ。約束な。(横目で相手を見遣りながら白い息を吐き出しては自嘲気味に笑みを浮かべ。相手に促される儘軽く腰を屈めるとそっと腕から下ろしてその手を取り、玄関先へと足を運びつつ微かに甘ったるい声色で)ん、どーいたしまして。こんくらいなら安いモンよ。あー、まぁそれなりに鍛えてはいるしなぁ。…ハッ、何急に恥ずかしくでもなった？まぁ風邪っぴきに無理させるのも気が引けるしなぁ。眠くなったら先に寝てな、ベッドまで運んでやるから。

あははっ、輩だこえー。…つか俺より寧ろ浩二さんのが色々溜め込んでそうっすよね。俺は存外素直に生きてますよ。…手始めに何かないんですか？（自嘲する様子を曖昧に目を細め眺めては、至極落ち着いた声色で柔く問い掛け。地に足が付くと自らも相手の手に指を絡めにいき、甘美な声に俯き加減で唇に弧を描いては解錠し扉を開け相手が玄関に入るのを待ち）へー、鍛えてるんすか。じゃあまた今度歩くの怠い時にヨロです。…いーえ、恥ずかしいだなんてとんでもない。只、浩二さんの男気溢れる体裁を守ってあげようって考え直しまして。…それとも、お願い聞いてくれるんですか？

手始めに、ねぇ…つってもさっき大体言ったけどなぁ。俺に気ぃ遣わなくて良い、素直に言われると嬉しい、あと無理はしない事。俺が思ってるのなんてその程度だわ。お前に無理させてねぇかってそれだけがいつも心配。(投げられた問いに片眉を上げて思案すれば指折り数えて見せるも不意に手を下ろし宙から相手へと視線を移し。扉を開けて待ち構える相手に軽く手で礼を示せば靴を脱ごうと身をかがめるも頭上から降る不穏な言葉に笑顔を引きつらせては顔を上げ)この顔でヒョロかったら示しつかねぇだろ？ん、任せとけ。……すーっげぇ嫌な予感するの俺だけ？…まぁ、とりあえず聞くだけ聞いてやろうじゃん。

あははっ、頼られたい欲求があるんすかね？流石兄貴だ。…まあでも１つ疑問なのが、俺が無理してないか心配してるっつーのですかね。…そう言う風に見えてたなら俺が不甲斐ないせいなんで、すんません。とは言え俺自身は何も無理してないんで、そんな事に心配するエネルギーがあんなら愛をくださーい。（至って軽い口調で告げては、指でハートを作り安堵させようと。相手の引き吊った反応に一笑しては、早々に靴を脱ぎ真っ直ぐに寝室へと向かい、上着と防寒具とマスクを床に脱ぎ捨て寝具へと横たえ、恋人を待ち詫びる様に体を揺らし）はっ、そんな変なもんじゃないっすよ。デレッデレに俺を寝かし付けてくださいって簡単なミッションです。先にベッドに行ってますねん。

そーね、頼るよりは頼られたいんだと思うわ。あー…心配に関しては、俺が悠チャンくらいの時なんざ、外に楽しい事がいくらでもあったからさぁ…ついなぁ。まぁでも、お前がそうやって言うんなら信じるけど。愛なんざいくらでもくれてやんよ。(苦笑混じりに後頭部を掻けば視線を彷徨わせつつ言葉を紡ぐも、自分の中で折り合いを付ければ次第にいつものへらりとした笑みを浮かべ。恋人の背中が寝室へと吸い込まれるのを見送れば漸く靴を脱ぎ、リビングを覗き愛猫が寝ているのを確認してから後を追う様に寝室へ。脱ぎ散らかされたコートとスヌードを手に取りハンガーへと掛けて、ネクタイを緩めつつベッドへと膝を掛ければ横たわる相手の唇へと口付けを落としてからくつりと笑って)お着替えもサービスしとく？

…あーね。浩二さんじゃねえっすけど、楽しい事やらしたい事を優先したらこうなってるだけですわ。それを言うなら、寧ろ金あって遊べる浩二さんの方が出歩いたりすべきだと思いますし。…んー、こんな顔させちゃってごめんなさい。心配掛けちゃってましたね。…浩二さんは真面目だから。俺を気に掛け過ぎてきっと負担になってる。…明日から上手くやるんで、そんな顔しないでください。（相手の苦笑を切なく眺めるも、鼻腔から深く息を吐き気を入れ替えて微笑を刻み。口付けを嬉々として享受しては、問いには首を横に振って答え瞼を伏せ微睡み、間も無くして眠りへと落ち）お着替えもお願いしたかったんですけど、こっちに来たら安心しちゃいました…甘やかして貰うのはお預けみたいっす。…浩二さん、おやすみなさい。大好きですよ。…蹴っちゃってくださいね。

…バカ、上手くやる必要なんてねぇんだって。お前が好きにしてんならそれで良いんだよ。…恋人の心配するとかさ、今までして来なかったツケが回ってるだけなんだわ。ウッゼェくらい心配しちゃう訳。でも負担とか思った事ねぇ…だからそのまんまで良いよ。悠チャンが俺の所に来てくれるのは純粋に嬉しいし。(相手の表情を見留めれば痛ましげに眉根を寄せてその頬を軽く撫ぜながらも真っ直ぐに見つめて。眼下の恋人が穏やかな寝息をたて始めれば再び口付けをし、そっと身体を起こして手早く着替えさせてからブランケットを肩口に掛け。自身もスーツを着替えてベッドへと潜り込んではブランケット諸共相手を抱き寄せて、目を瞑り甘ったるい声で呟いては微睡の中へと)…甘やかすのなんかいつでもやってやるわ。ゆっくり寝てなぁ。おやすみ、悠チャン。…大好きだよ。

はー…つっかれた…。ただいまぁ(緩慢な動きで玄関の扉を開ければ深くため息を吐きながら靴を脱いで。リビングへと足を進め、愛猫を抱き上げては癒しを求めるように頬擦りをし)

…んー怠いー。頑張れ俺ー。（ルームウェア姿で一通りの家事を終えると、寝具へと戻り横たえて深く息を吐き。熱ばむ身体は他に症状はないものの、恋人に感染さない様にとマスクを着ければうとうとと微睡み、間も無くして浅い眠りに就き）

（リビングから響く物音で目を覚ますと、恋人の帰宅は想像に難くなく緩慢に上腿を起こしてベッドを抜け出し。ぺたぺたと足音を立てつつ彼の居る部屋へと赴くと、目を柔らかに細め手を振り）おかえりなさーい。なんか今日寒くないですか？

…寝てっかな。(リビングから踵を返して寝室へと足を向ければベッドの中の恋人を見つけ。額に口付けを落とせば傍に腰掛けてネクタイを緩めてはスマホに目を落として)

あっは、さっきから気が合いますね。ちょっと俺が帳尻合わせるんで。こっちはスルーしてくださいね。

あー、悪ぃ。上の蹴ってなぁ。

ん、ただいま、悠チャン。(歩み寄ってくる恋人を見つければ愛猫を床に下ろしてから緩く抱きしめて。相手の言葉を聞き留めれば眉根を寄せて)さみぃけどさぁ…マジで風邪悪化してんじゃね？ちゃんと寝てな。

（布団の中は熱が篭り些か寝苦しく、熟睡には至らず。寝具の振動でふと目が覚めれば、ぼやけた視界の端に恋人の姿が映り自ずと表情は緩み。寝惚け半分の重い眼と甘ったるい声遣いで彼を呼んでは、求める様に両の腕を宙に掲げ）…おかえりなさーい。だっこー。

すんません、グッダグダに被ってますね。気が合いすぎるのも困り物っすわ。（腹を抱えて笑いつつ）
じゃあ申し訳ないんすけど、浩二さんの遣り易い方セレクトしちゃってください。

…ん。ただいまぁ。(後方から聞こえた声にスマホを置いて振り向けば甘ったるい声を上げて出しつつ背中に手を回して抱きしめて。些か体温の高い相手の首筋に頭を垂れれば酒のせいかはたまた恋人のせいか、早い鼓動を悟られまいと笑みを浮かべ)風邪、どうよ。熱測ったか？

俺ぁ、似たモン同士過ぎてにやけが止まんねぇけどなぁ。まぁでも、こっちにするわ。あんがと。これは蹴ってなぁ。

…あれ、何か今日変じゃないっす？…ああ、お酒を飲まれたと。承知でーす。本日はどちらで飲んできたんですか？（平生とは様子の違う反応に僅か見開くも、鼻腔擽るアルコールの香りで事情を察すれば一笑し、髪を梳く様に撫で慈しみ。続く問いには瞼を伏せ首を横に振り、抑揚のない口調で）熱だけある感じっすね。体温なんて計るまでもなし、ありますよ。今日は一際寒いんで、俺っつーエコな炬燵で暖まってくださーい。