白膠木簓 2019-10-03 21:10:21 ID:c50696174 |
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(布越しに触れる足の温かさに笑みが零れた。然り気無さを装って挟み込み、無言で交わす戯れ。昔に比べて小さくはなったタタンタタンと子気味の良いレールを走る電車の音、その振動を足裏に感じながらふと徐ろに画面から目を離しては外の景色を眺めた。悪くは無い天気、穏やかな休日。…愛しい人とのデート。幸せの絶頂にいる今この時、同時に何だか夢を見ている様にふわふわとした浮遊感があって少し怖いとも思う。その浮遊感というのはわくわくと楽しい感覚などではない、綱渡りをしているかの様な緊張感があるのだ。デートという言葉を自身に言い聞かせ繰り返す度に腹の底が冷える。バレたらあかん、撮られたらあかん。…外での触れ合いは出来る限り避けた方がええよな。男同士の親友の距離感てどんな感じやっけ。簓とばっかり一緒に居ったから正直わからへん。ぐるぐる際限なく回るそんな不安事と心配事――を止めてくれたのは件のデート相手 簓本人だった。震える手元のスマホ、画面を見れば彼らしい文面とスタンプ。いつもと変わらぬ彼の様子――否、いつもより幸せそうに見える彼の様子にじんわりと胸が温かくなって軈て霧散する緊張、ぽっかり消えたそこを埋める安心感。…そっか、気負わず楽しめばええんか。彼が画面閉じたのを見て釣られるように己も画面閉じポケットへ仕舞い込む。目線を下へ下げたなら彼だけを視界に入れて、ふわりと笑みを零した。…車内アナウンスを聞きながらゆったりと足の疲れ解す振りして足踏み、密やかに彼の足と遊び。気が付けば次は目的の駅で、)
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