白膠木簓 2019-10-03 21:10:21 ID:c50696174 |
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(履き潰す程ではないが十分に柔らかくなった革靴はよく足に馴染んだ。手入れを欠かさずに行なっている為か数年はお世話になっているそれに内心ひっそり礼を言う。お陰でちゃんと走れたで、なんて。…ふと彼から向けられた視線に目敏く気付く。マスクで見えない口元は、それでも目元だけではっきりと笑っているのが確認出来た。まろいそれに無言でふにゃり破顔し応えたならそっと彼の後を追う。乗り込んだ電車は混雑しているわけではないがそれでもほぼ全ての座席が埋まっていた。不意に零された問いにはたとすれば指先示すそこへ目線を滑らせ、次いでぽつねんと空いた一席分の空間を確かに視認して、)…ん?…いや、俺はええわ。ささ…が座り(名前を呼び掛けて――咄嗟に愛称へ切り替える。簓なんて珍しい名前が聞こえたら近くの目線は必ず此方へ向きそうだったから素早い判断。緩く腰を押して歩くよう促せば半強制的に彼を着席させ、自身はその前に立つと吊り革持って前の座席からの視線を背中で遮断してやりつつ スマホ手にしてぽちぽち…。メッセージアプリ、彼とのトーク欄にて「あと10分程度で着くから、見たい店ないか確認しとき」なんて言葉を送信。これも不用意に声を聞かれて気付かれないようにとの判断、)
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