館の悪魔 2019-07-15 07:23:57 |
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【メフィストフェレス】
館の主たるインキュバスは、多次元世界を渡り歩く、女を喰うことで生き永らえる種の悪魔だ。
見た目は三十代から四十代の、西洋の血が流れる男。身長は190cmほどで、軍人かと見紛うほどにがっしりした、筋肉質な体躯をしている。
髪は白みがかった金髪、目は紫がかった薄青色。精悍な顔つきで、くしゃりと笑う癖がある。
館の外に出かける時は真っ黒な長いコートを必ず羽織る。すると蝙蝠に見えることから、蝙蝠男と呼ばれている。
基本的に落ちついていて、ゆったりとした雰囲気の男だ。だが化けの皮が剥がれると男の邪欲が露わになる。紳士なようで浅ましく、高貴なようで野卑であり、優しいようで乱暴だ。甘く優しいふりをしても、所詮は女を喰う悪魔。卑しいけだものには変わりない。
メフィストには昔唯一インキュバスとしての本能でなしに愛した娘がいたというが、結局彼女を殺してしまったのか、何らかの形で死に別れたのか、真相は誰も知らない。その話に触れられてもそこまで嫌な顔はしないが、あまり詳しくは語らない。
館での生活が長いカナリアたちのなかには、彼が果たして本当に生まれながらの悪魔なのか疑いを持つ者もいる。
夢魔であるなら老いることなど有り得ないし、獲物の女の好みによって姿がちがって見えるはず。
彼は女を喰う性癖のある人間の魔術師か、あるいは元人間の悪魔ではないか、そう考える者もいるようだ。
メフィストは自分の心臓を館のどこかに隠している。「彼女」の記憶のほとんどもそこに一緒に封印しているようだ。
胸板に耳を当てれば鼓動を聞くことはできるが、中にあるのは偽の心臓。
悪魔メフィストフェレスを本当に殺すには、ガラスケースに守られている彼の本物の心臓を処分するしか道がない。
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