御鏡 2019-03-23 18:45:40 |
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失礼します、短編投下させて頂きます。
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沙希香姉さんが急に消えて数日経った。
僕の周りの空気は今日も暗い。あの人が消えてから、今までのことが嘘のように重くなった。
話しかけたって気がつかない人が多い。顔色が悪い人や寝込んだ人がいて、僕が多分一番まし。
一番悪いのはマヤさん。特にあの人と一緒に居たせいかショックが大きく見えた。
あの強気はどこにいったんだ、と噂を耳にしたときは言いたかった。が、マヤさんの様子を見ると言葉がつまってしまった。
何故だろう。僕だって悲しいのに、悲しさが溢れるだけで、体には影響がない。
涙だって沢山流したのに、ケロリと立ち直ってしまった。
あの人が失ったら凄く嫌だ。あの祭りで強く思った、の、に。
……まるで、何か操られているような。
考えすぎか。
一旦冷静になろうと、水を飲みにいこうとしたとき、玄関の扉から音が聞こえた。
みんなは出られそうにないし、玄関に今近いのは僕。
開けない理由も特にないから、遠慮をせずに扉を開ける。
すると、深く帽子を被り、何やら大きな荷物を抱えていた子どもが。
「お届け物に来ましたあ、どうぞ」
声からして少女だろうか。
そんなことを思いつつ荷物を受け取る。見た目に対して少し重みを感じた。
僕に荷物を渡した少女らしき人は、直ぐにそこから立ち去ってしまった。
荷物を床に置き、扉を閉じる。
こんな荷物頼んだっけ? 誰かがあの子にお願いしたのか?
箱開けて、リビングに置いてたら持ち主が適当に取るだろ。
中身が気になった僕はその選択を取った。荷物届いたときそうする人多いし。
箱をさっさと開ける。
見覚えのあるものが、視界に入ってきた。
サラサラで艶のあった黒髪は、ボサボサになり輝きを失っている。大事にしてたであろう衣服は、赤いシミを作っており汚れているところが多々あって。
愛しいその赤の瞳は閉ざされている。
血色のよかった肌や唇はあの頃とは正反対。
「……沙希香、姉さん……?」
その人物の名前を呼ぶ。
震えてしまって上手く声が出てこなかった。
認めたくなかった。認めたくなかったのに。
全然動かずに冷たくなっている相手を見れば、認めるしかないじゃないか。
「馬鹿、馬鹿……うわあぁぁああぁあ!」
誰に馬鹿と言ってるなんて分からない。何故叫んだのかも分からない。
けれど、スイッチの切れたように悲しみと涙が溢れてきたのが分かった。
僕はマリーゴールドを抱き締める。
そのまま抱え、声を押し殺して気づかれないよう泣いた。
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