御鏡 2019-03-23 18:45:40 |
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大変お久しぶりです、久しぶりに投稿させていただきます。
「……本当に、良かったの」
袖で隠れている手で己の口を覆い、ぼそりと呟いた君。
きっと思わず零した言葉なのだろう、僕の方は見ずにぼうっと呟いた気がしたから。
「ん? なんのこと?」
だけど此処で終わらせるのは面白くない。久しく聞いた、強気な君の弱々しい声。
それが顔に出てたのか、僕はにっこり笑っていたらしい。口角が上がる感覚と、君の露骨に嫌そうな表情をしたことで分かった。いつもそうするもんね、そんなに僕の笑顔が嫌い?
それはさておき。
「とぼけないで、あの子のことよ。あんた今なら会えるでしょう? どうして会わないのよ」
納得がいかない、とその態度と顔が語っている。腕を組みながら僕を睨んでいた。
どうして、って言われてもなあ。
「だって……今会っても面白くないじゃん。だからいつか、ね」
あの子に会ったらきっと驚いた顔をすると思う。何故ならあの子は分かりやすいから、そんな顔を想像しただけでもクスクス笑ってしまう。
……やだなあ君、そんな目で見ないでよ。
「出たよ、嘘……そんなに言いたくないの? 本当はあの子のこと」
「君に言って、何か利益がある?」
余計なことを言いそうだったからわざと被せた。ついでに口も覆って。
びくり、と君の肩が動いて退いた。
……本当はあの子のこと。
その声が頭から離れなかった。何かムカついたから頬を弄りまくってたら頬を叩かれた。解せない。
「……そう。じゃあとられても知らないからね。」
頬弄りもやめ、暫く続いた沈黙を破ったのは僕じゃなく君。
その言葉の意味はどういうことか。なんて聞かなくても分かる。きっとあの人の企みのことだろう。
「……わーってるって」
思わずにやりと口角が上がる。そんな僕の顔を見て君は目を細め、何か呆れたようにしてぼそぼそ言ってる。
あんなやつらに奪わせるもんか、あの子を。
大事な子を守ってやるよ、そうだろう。
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