悪魔 2018-11-04 19:58:34 |
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(窓から差し込む光に目を覚ますとまだ微睡む目を擦り上体を起こす。すでに彼の姿はないことに気がついて、昨夜の様子からまさか消失してしまったのではないかと焦る。彼に体温はもとから無いようだからシーツは勿論冷たく彼の居た形跡はない。頭の中から足先まで凍りつくように覚醒すれば飛び起きて寝室を出た。と、そこには求めていた彼の姿。人間の姿にこそなったものの元気そうな様子に安堵して小さく胸を撫で下ろす。そして次に湧いてきたのは羞恥。昨夜彼から流されるように受けた口付け。それは拒むのを忘れるほど心地よく欲に溺れそうで恐怖もあったが嫌ではなかった。ただ友人とする行為ではないのは分かっていたし、自分の中で起きつつある彼に対する心情の変化にまだ戸惑いがあった。まだ彼の唇の感触が残っているようでそっと口元に指で触れたあと、再度彼の存在を確認するように見ては、いつもの穏やかな微笑みを浮かべて。「おはよう御座います。もう起きていたんですね。変えの服を用意しますので着てくださいね。私も準備してきます。」結局彼の行いに流され共に街へ行くことに決めた為、変えの服を渡しては自分も着替えに一度寝室に戻る。今日は前司祭に教会を任せるため一日彼といられる。服も普段着のカソックではなくよそ行きのシャツと細身の黒いズボン。それに十字架を首から下げ、念のためにと護身用の折りたたみナイフをズボンのポケットに忍ばせた。彼のもとに戻り、一緒に軽く朝食を済ませると自分は膝下まであるロングコートを着て、彼にはフード付きのダッフルコートを着せてやり日除け用にとツバ付きのニット帽をかぶせてやって。勿論サイズは自分のものなので彼には大きいが、ゆるい雰囲気は何だか可愛らしくて「よく似合ってます。」と嫌味ではなく本心から褒めるもその表情は楽しげでしばらく小さく笑いを零していた。)
(街に付くまでに彼の魔力がまだ回復していていないこと聞き、注意の必要を感じながらも純粋に彼との外出を楽しみたいため気持ちを入れ替えて街の店や人々の話をする。そうしているうちについた街はこの寒さのせいか人は疎ら。彼の体調を気遣いながら歩幅を合わせゆっくり進んでいると雑貨屋の娘がこちらに気づいて店先から顔をのぞかせて、《あら神父さま、今日は随分とかっこいいお方をお連れなのね。紹介してくださらないかしら。》と頬を赤く染めて彼を見る。その時なぜかほんの少しもやっとしたがそのことすら自覚せずに軽く友人だと紹介し「すみません、用事があるので失礼しますね。」と微笑むと彼の手を取って雑貨屋の前をやや足早に離れて、少し行ったところで立ち止まって「カルマさんは綺麗なのでもててしまいますね。声を掛けられても変な人にはついていったらいけませんよ。」と今の彼の姿もあって自分よりずっと長生きなのに子供扱いするように注意を促しては「疲れたら言ってくださいね。」と片方の手を繋いだまま空いている手で彼の目元を指で軽くなぞって微笑んで。さて早速服屋に向かおうと行く先の曲がり角にある服屋の看板を指さして場所を示した。)
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