悪魔 2018-11-04 19:58:34 |
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(食卓の準備を手伝ってくれる彼に軽く礼を言いながら、自分も席に座り問いかけの返答に少し真面目な表情になる。彼が言うことが本当なら心の闇を持ち悪魔を産んでしまう人間こそ悪の根源。誰だって自分の醜い闇の部分は毛嫌いするから、そこから生まれた悪魔も受け入れがたく、悪魔祓いまで出てきて排除しようとする。しかしそれはあまりにも…、「人間は身勝手すぎますね。…少し胸に刺さるものがあります。自分の弱さを見せられたようで…。カルマさんは、人間が嫌いですか?」彼のどこか棘のある物言いは、人間のあり方を考えさせられる。彼にそのつもりがあるか否かは不明だが少し責められているようにも感じ、また棘の中に独りで生きてきた寂しさが含まれている気がし、そうさせたのも人間かと思えば、嫌いなのか問う。彼らにとっては“餌”でもある人間の好き嫌いを聞くのは愚問なのかもしれないが…。やや重たくしてしまった空気、少しでも和ませようとまだシチューを口にしていない彼に食べるようにすすめ、自分も一口掬って軽く冷ましてから口に含む。家族の居所を聞かれればシチューにつけたスプーンを持ったままほんの一瞬、常人では気付かない程度暗い目をして動きが止まるが、すぐに顔を上げていつもの瞳で目を合わせ、「家族は…──両親と弟は10年前の紛争に巻き込まれて亡くなりました。貧しい村だったので戦地には最適だったんですよ。」どこの国だって自国の領土の損害は減らしたい。そこでたまたま両国の間にあった、無くなっても当たり障りのない小さな村が戦地に選ばれた。よくある話だ。世の中は何かしら犠牲の上で成り立っているのだから。淡々とし口調で話し最後は少しだけ眉を下げて微笑み言う。長く生きてきた彼にはつまらない話しかもしれないとすぐに明るく切り替えようと「あ、でも妹には会えますよ。孤児院で働いています。びっくりはするかもしれませんがきっとカルマさんを気にいると思います。…明日は街でゆっくりしたいので、またの機会に是非。」気の強い妹のこと、彼を物珍しく思うだろうが拒絶したり攻撃したりすることはないだろう。彼と愛する妹が会うなら、これほど嬉しいことはない。先程少しだけ見せた悲しみもひた隠し、彼が妹に何かするなんてことも疑わずに穏やかに微笑めば再び彼に食事を勧めて、「明日が楽しみです。」なんて呑気に笑う。もちろんテーブルの上に彼を貶める果実がうっそりと食べられるのを待っていることに気付きもしない。)
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