悪魔 2018-11-04 19:58:34 |
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リュカ・ヤニス…、じゃあ俺も名前で呼ぶことにするよ、よろしくねリュカ。
(相手の言葉に頷きながら相手の名前を口にした。相手の名前も自身の名前もお互いが明かしあった事で少しずつ歩み寄っていく、名前を呼ばれる度に相手の事を思い出し、自身が名前を呼ぶ度に相手も自分の事を思い出してくれる。彼の心の中には自分という悪魔の存在が片隅にでも居場所を作り始めているはずだ、それでいいちょっとずつでいい相手の事を沢山知っていこう向けられた視線に反応するように赤い瞳を向けた。優しい瞳で身を屈めた相手は自分の唇をなぞった、さらりと指が掠めた瞬間反射的にだが相手の腕を素早く掴む。「…リュカ、貴方は気を許すのが早すぎる。俺はそんじょそこらの人間なんかと違う、悪魔なんだ。無闇にちかずくと噛みつく時だってあるんだから…。」掠め取られた野菜の切れ端と一緒に彼の細く長い指をペロリと舐めあげた、彼は優しすぎる故直ぐに人を信頼し、信用しやすいのかもしれない、だからあんな無防備に自分に触れたりするのだろう。悪魔としてではなく普通の人間のように接せられ焦っている自分がいるかもしれない。安堵感を覚えるのと同時に焦りを覚えたのも事実だ、視線を彼と交えたまま舐めた指にそのまま牙を突き立てた──ガリッ生々しい音を聴きながら口内でほんのり鉄の味が広がっていく、相手の指の繊細な傷口を舌でなぞっていき口を離した。警告のつもりだった愛している神父様だから他人に見せたことの無い内側を知って欲しかったのに、悪魔は臆病だ。軽蔑される事も、嫌われる事も得意だと言うのにこの人にだけは、リュカにだけは嫌われたくないと…そう思ってしまう。そんな自分を誤魔化すためにこうやって、自身を偽り隠して今まで生きてきた。それが、悪魔だ悪魔としての自分自身だ、片腕を相手の首元へ回し顔を近ずける。鼻と鼻が触れ合うぐらいの近さで相手の目をのぞき込んだ。赤い瞳と黒い瞳、部屋の光を吸い込んで藍色へと色を変えたその目に色を写すように瞬きを忘れる程見入っていた。この目を、いやこの目だけでなく全てを早く手に入れたい。一人の人間の存在に振り回される度に手に入れたいという欲求が強くなっていく、腹の中に溜まっていた熱は消え失せ、料理もつめたくなっている。段々、普段の自分に戻ってきたような気がする、脈を打ち熱が集まっていた心臓部分をクシャりと掴んだ。鼓動なんてない、温かさに触れる度痛んでいたはずの部分は嘘かのようにいつも通りで、首に回した腕にもう一度力を込めた。)
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