悪魔 2018-11-04 19:58:34 |
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(手を引かれ案内されたのは、彼の家なのだろう。小さな造りだが、掃除は隅々迄行き届いていて、パッと広がっていく光に目を細めソファーに腰を下ろしていた。次々と前に並べられていく食事を唯黙って見つめている、野菜のスープにパンと紅茶態々温め直されたそれらは真っ白な湯気を昇らせていた。彼は何故、悪魔である自分を食事に招待したのか、そんな事をぼんやり考えながら「…カルマ。」と短く答えた。「神父様の名前も教えて…あと、俺が本当の名前教えたの貴方が初めてだから。」伏し目がちに相手の目は一切見ずテーブルに目線を落としたまま続けた、カルマというのは自身の本当の名、悪魔祓いが存在するこの世の中悪魔の本名は悪魔を祓う際によく用いられるのだが、この人なら大丈夫だろう…確信のない自信だが彼を信じてその名前を口にした。空中をさ迷っていた目線はやはり、テーブルに並べられた食事にいってしまう、まだ冷めることの無いそれはどことなく興味を煽られた。ゆっくりとそえられたスプーンを握るとスープが盛り付けられた皿を持ち上げる、手の平にも感じる熱は「暖かい」その一言に尽きる。鼻を近ずけて匂いを確かめるものの鼻腔をくすぐるこの匂いの善し悪しなどよく分からない。警戒している様にゆっくりとスプーンを沈み込み口元へ、ゴクリと喉を鳴らし飲み込んだ。喉から胃へ、少しずつ流れていく温かさに目を見開いた、胃に溜まるこの感じは体温のない身体には効果的でじんわりと内側に熱が留まっていく。自然と身体に集まっていく安堵感に柄でもなく頬が緩むのを感じた。「…しょっぱくて、少し酸っぱくて、でも…なんだろ、優しい感じがする。」途切れ途切れの言葉に、まだ整理出来ていない咄嗟に、なにか答えなくてはそう思った。これが俗にいう人間の美味しいなのだろうか、悪魔の食事と違い温かさに溢れるこれは少し楽しいきもする。ゆっくりと熱を帯びてきた身体に、来ていたスーツの上着を脱いで、また1口口に運んだ。「────貴方に会って、温かさに何度も触れた。上手く言葉に出来ないけど、美味しいと思うよ。」断言は出来ない、人間の美味しいと悪魔とではきっと違いだってある。不安げにボソリと上記を述べた。)
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