【 少人数制群像劇 】√ソレイユ旅団√【 王道ファンタジー 】

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√  2018-08-13 18:48:53 
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   ――――古代遺跡より発掘された、“運命の預言書”『消滅の雲』の項抜粋――――

◆ネーイェルの月、月初のこと

 ――紅蓮の火柱が天を穿ち、世界中を消滅の雲が覆うだろう。
   雲は太陽光から暖かさを奪い、冷たい光だけを残し、大地を不毛の地へ染め上げる。
   そして、二代目魔の王を除く全ての魔族が、大陸から消し去られるだろう。
   魔族の消失により世界の均衡は崩れ、破滅へのカウントダウンが刻まれ始める。
   賢者イーニェ、鍛治匠テオ、魔人ウルスラは、始祖としての義務を全うしなければならない時を迎える。

◆アルヴィトの月、半ばのこと

 ――力ある人々が集い、消滅の雲を晴らすため、始祖の手により旅団が結成されるだろう。
   その旅団は、雲の押しのけ大陸の未来を照らす、太陽の名を冠して“ソレイユ旅団”と呼ばれることになる。
   しかし一方で、夜の名を冠する消滅の雲の使徒・“ナハト”が現れ、太陽の行く手を阻むだろう。

     著 / 預言者アースガルド

――――この予言書が見つかったのは、エルルの月のことだった。
“消滅の雲”という未曽有の災厄に対する事前の対応策は預言書には記されておらず、大陸の人々は戸惑い、魔族は怯え、刻々と時は過ぎた。
そして、ネーイェルの月の1日。
 
 予 言 は 現 実 と な っ た 。

2ヵ月の時が過ぎ、アルヴィトの月、1日。
ついに始祖たちは重い腰を上げた。
そして、大陸の人々へ招集をかけた。

――「 雲を晴らし、大陸を救いたい者は、王都アザネリアへ集合しろ 」と。


【閲覧ありがとうございます。暫くレス禁です】

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  • No.42 by ワルキューレ騎士団長と賢者  2018-08-19 00:32:38 


【 ジャックス・ヤーファ / 王都アザネリア-王宮・大広間- → アザネリア平原 】


(しばしの歓談の後、ガチャガチャと音を立てつつ、甲冑に身を包んだ3人の騎士が大広間へと現れた。彼らは、先ほど王が演説を披露した壇上に上がり、隊長格と見られる男が一歩前に出て、声を張り上げた)

あー……諸君、静粛に。……ご協力どうも。俺はワルキューレ騎士団長、ジャックスだ。今回の俺の役目は2つ。1つ、賢者殿から預かっている伝言を諸君に伝えること。2つ、諸君の一部を移動ポータルまで護衛すること。詳細は追って説明する。まずは1つ目だ。

(自分の肩書を述べつつ、可動式である兜のフェイスガード部分を指先で上に押し上げる。鎧の下から覗いた双眸は青く、切れ長の目元が男性特有の鋭さを感じさせる。直属の部下であろう、後ろに控える騎士から何やら丸い物体を受け取り、旅団員たちによく見えるようにそれを頭上高く掲げた。すると突然、その球体からホログラムのようなものがジャックスの前に投映される。映し出されたその人物を目の当たりにして、大広間にいる何人かがざわついた)

『始めまして。ご存知の方もいるだろうけど、私はイーニェ。賢者って言った方が分かりやすいかしらね。とにかく、あなた達には心からお礼を言わせてほしいの。私たちの呼びかけに応え、大陸の為に立ち上がってくれて……本当にありがとう。直接会って感謝の気持ちを伝えたかったんだけど、生憎本体が多忙でね……映像で失礼するわ。さて、まずあなた達に何をしてもらうかだけれど。手を貸してほしいことがたくさんあるから、まずはあなた達をいくつかのグループに分ける。そして、グループごとに大陸のほうぼうに散ってもらうことになるわ。メンバーは此方で決めさせてもらったけれど、異議があるならそこの男前に言って。じゃあ発表するわよ、……さあ、指輪が同じ色に光っている人達で固まって頂戴』

(そう、ホログラムで現れたのは賢者イーニェ。大陸で最高峰とも呼べる有名人である彼女の登場に、実物ではないとはいえ旅団員がざわめくのも無理はない。凛とした表情でイーニェの言葉をじっと聞いていたジャックスも、イーニェから“男前”と言われれば不似合いなほどぽっと頬を染めた。そしていよいよメンバー発表。アンとその周辺にいたアメイズやメリーたちの指輪が、淡く緋色に輝く。アンも、まさか今仲良くなった旅団員たちと同じ班になれるとは思っていなかったらしく、“やったあ!”と小躍りしつつメリーに抱き着いて)

『じゃあ次。色ごとに、何をしてもらうか伝えるからよく聞いて。……――――そして最後、緋色のグループ。あなた達には、ナハトの討伐方法を探ってもらいたいの。まずは魔法都市ソルマーニに移動して、大陸魔導研究部のミズホ・ハイエンを訪ねなさい。話は通してあるから、多忙な彼女もまともに取り合ってくれるはずよ。頭を潰しても死なない奴らの殺し方なんて、まさに雲を掴むような話だけれど。だからこそ、彼女の知恵を借りて頂戴。ソルマーニへの移動方法だけれど、アザネリア西南部の移動ポータルを起動させておいたから、それを使って。ポータルまでの道中は、ワルキューレ騎士団に護衛をお願いしてあるわ。とはいえ、油断は禁物よ。それじゃあ、武運と幸運を。』

…………ってわけだ。お前らが緋色か……ポータルまでの短い道中だが、よろしく頼む。早速出発するぞ、お前らで最後だからな。……さあ、手の一つでも振ってやれ

(イーニェが文章を締めくくると、ぶぅんと音を立ててホログラムは消え去った。入れ替わりに、ジャックスが緋色のグループに歩み寄りつつ簡単に挨拶を。グループごとの任務を伝えられた順に、次々と旅団員が大広間を後にして旅立ってゆく。広間の外からは、震えるような歓声が聞こえてくる。アザネリアの民が、大陸の唯一の希望であるソレイユ旅団の門出を華々しく祝っているのだろう。自分たちが命を張るわけでもないのに、と忌々しげにジャックスはかぶりを振った。そして先ほど上げたフェイスガードを再び下ろすと、今や緋色のグループだけとなった大広間を後にすべく、扉を開いて。鳴り響く、割れるような歓声。大広間から王都の門まで、途切れることなく花道は続いていた。ここでようやく、ソレイユ旅団の面々に実感が湧くだろう――本当に、大陸の未来は自分たちにかかっているのだと)


――ったく、喧しいこった。いいよなあいつらは、誰かに縋って祈ればいいだけなんだからよ。……っと、これはアザネリア市民にはオフレコな。支持率下がっちまうから

(花道を抜け、王都アザネリアの門をくぐる。門の向こうには、広大な平原が広がっていた。未だアザネリアの領地ではあるが、そこに人影は見えない。急に物寂しくなった静寂を、ジャックスの悪態が打ち破る。緋色のグループを引率するかのように先頭を歩きつつ、首だけで後ろを振り返りながら自分勝手な釘を刺しておいて)

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