√ 2018-08-13 18:48:53 |
通報 |
【 Prologue 】
明けない夜はない。止まない雨はない。そして、晴れない雲はない。
誰もがそう信じていた。予言が現実となるその日までは――。
鼓膜を揺さぶる轟音と共に、嘘のように巨大な火柱が上がった。
それは夜明け前の空を橙色に染め上げ、成層圏にも届くほどに、高く高く天を穿った。
天空を貫いた火柱が消えると、天蓋に穿たれたその孔から、灰色の何かが大量に渦を巻きながら出現した。
それは、スーパーセルとは比べ物にもならない、巨大すぎる雲の群れ。
大陸の上空全てをあっという間に覆いつくしていくその災厄を、人々はただ眺めることしかできなかった。
やがて、大陸中から悲嘆の叫びが木霊した。
人間たちの嘆きに、一つだけ、魔族の慟哭が混じっていたのは気のせいではないのかもしれない。
その日から、たった一つの太陽は失われた。
だが、悪いニュースばかりではない。
無意識に希望を求め、大陸の人々は縋るように口々に言った。
「王都アザネリアで、新しい太陽が誕生した」と――。
トピック検索 |