助手 2018-05-23 21:25:11 |
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『よぉ気がついたか、ワトソン先生?どうだ深海魚になった気分は』
(ジョンが深い眠りから目覚めた時、まず最初に感じるのはその場所の寒さだろう。うっすらとした明かりしかないその場所は冬のロンドンのような室温だった。ジョンが倒れているのは水族館の中、その中でもとびきり暗く寒い、深海魚用の水槽内だった。水槽の大きさは各辺3m程の立方体で水槽が満タンになった時の水位は当然ジョンの背丈よりも高い位置にくる。今は水が抜かれているが、深海魚に合わせて作られた水槽は空調が抜群に効いていて水槽内を凍えるほどに冷やしている。水槽の内と外を区切るアクリル板は深海魚用の水圧に耐えられるように何重にも連なった分厚いものだった。ジョンの体は四肢の自由こそきくものの、胴体には鎖が巻かれており鎖は錠によって固定されていた。錠はジョンの背中側にあり、手を回せない位置に配置されていて例え鍵があったとしてもジョン1人では外せそうにない。鎖の先は水槽の底に繋がれていて、このまま水槽に水が貯まってしまえばジョンは鎖に繋がれたまま水中から出ることはできず、その後の行く末は想像に難くない。アクリル板の向こう側、水槽の外側には男が1人。ジョンを眠らせこの場所に運んだドレッドヘアの男だ。水槽の内と外は直接声が届かず、男の口元にはハンズフリーマイクがあって、水槽内に取り付けられたスピーカーから彼の声が届いているようだ。)
『あんたのそばに箱と工具箱とスマートフォンがあるだろ?箱は俺の傑作、中身はあとで教えてやるよ。まずは役者を揃えなきゃな。それであの探偵に電話しろ。俺をムショ送りにしやがったあの探偵に…』
(ジョンの手が届く範囲には3つのものがあった。ひとつは工具箱、ひとつはジョンのスマートフォン、そして最後は黒い箱で静かにジョンの真正面に鎮座している。男はジョンにスマートフォンで探偵に連絡をするよう指示した。その際にまた恨みの篭った黒い感情が滲む)
『あいつにこう言え。依頼人がいるから水族館に来い、パンドラの箱を開けて欲しいそうだ、極秘の依頼だから警察には知らせるな…ってな』
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