助手 2018-05-23 21:25:11 |
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……シャーロック、…?
(賑わう飲食店や帰宅ラッシュで車の台数が多い明るい大通り、ふと自分が歩いている通りと車道を挟んで反対側の通りに、どういう訳か目が行った。行き交う車の切れ目に視界に捉えたその存在を“彼”だと認知するまでに数秒を要したが、確かにあれは見間違うはずもなくシャーロック・ホームズで、どこからどう見てもデートの真っ最中だ。思わず足を止めると後ろで自転車がベルを鳴らした。誰だあの男は。誰だあの女は。自分の知る探偵は無愛想でコミニケーション能力は皆無、いつもシックなシャツを着た頭の切れる男だ。だと言うのに、反対側の通りから見つめる彼は在ろう事か自分でさえあまり見たことのない甘い微笑を浮かべ、今時の爽やかな若者のような服を着て、そもそもあんな服どこから持ってきたのか、その上腕には女性を絡めているのだ。全く頭が追いつかなかったが、しばらく立ち止まったのち1人首を傾げそのまま歩き出す。見なかった事にしよう、あんな訳の分からない現場は。彼だって彼女くらいいて当然だと、気にするなと自分に言い聞かせながら家の方向へと歩きながらも全く腑に落ちず、眉間の皺は深まるばかり。あんなのは自分には関係のない事だ。)
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