赤の女王 2018-03-04 13:31:36 |
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眠り鼠を知ってるの? アンタ達が一緒に居るの想像したら、こっちが眠くなりそうよ。(ほんの小さな呟きに答えが返ってきたことよりも、その内容の方に驚いた。世間は狭いと言うべきか。そして、二人が談笑しているのを思い浮かべれば、きっとその空間は他の場所よりも緩やかに時間が過ぎていくに違いないということが容易に想像できて。微笑ましい様子にくつくつと笑みを堪え俯き。「アンタって本当にバカね」歯の浮くような言葉も、相手が口にすると様になるというか、まるで一遍の詩の朗読でも聞いているようだった。握り直された手にじんわりと耳の先が熱くなるのを感じたけれど、何の衒いもない相手の行為を再び跳ね除けるような気にはならず、俯いたまま弱々しく手を握り返し。「涙の湖って、さっきアンタが言ってた場所ね。そこまで言うなら遊びに行ってあげる。楽しくなかったらイタズラするわよ!」自己紹介の時にも聞いた名称に顔を上げると、得意げなウィンクを見てクスクスと笑いながら、バァンと指鉄砲で打ち返すフリをして見せ。出店街は想像していたよりもずっと華やかで、イベントということもあるのかもしれないが、人々の活気はこちらの気持ちまで高ぶらせるよう。意気揚々と店へ案内する相手の姿を見ているのも楽しかったし、目的の場所へ着いた時、そこに並べられた菓子は味や食感を想像するだけでも満たされてしまいそうな品々ばかりだった。「すごい。端から端まで、全部食べたいくらい。アンタのオススメは……って、こら! 変なこと言って広めないでよ!」棚の左から右までゆっくりと首を動かして見ながら感想を述べてから、自分では選びきれなさそうなそれの選択を相手に任せようとしたところ、他人まで巻き込み始めた相手を諌めるように腕を強く引き)
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