赤の女王 2018-03-04 13:31:36 |
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なんだ、そうなの。それじゃあ、アンタの遊園地、思いっきり堪能してあげる。(物を買うのにお金が必要かと思えば、遊園地はお金が不要だと言う。こっちの常識はすっかり入り組んでいるようで、慣れるのにはまだ時間が掛かりそうだ。アトラクションに乗れると分かって胸が弾むような気持ちになっているのが気付かれないように、ツンと澄ました顔で口端を上げる。「アンタってよっぽど口が軽いのね。そのうち刺されても知らないわよ」サラリと吐き出される下心を孕んだような言葉は空気のように軽く、はあ と呆れて溜め息を一つ吐いてから、相手の口を塞ぐように片手で両頬を挟み込み。「す、拗ねてないわよ! ただ面白くないだけ! ちゃん付けなんて子供染みたマネしたら、一生口を利かないから!」手を離して再び歩みを進めていれば、とんでもないあだ名を付けられそうになり不愉快そうに眉を寄せ声を上げた。「……でも、個別の呼び方をされるのは嫌いじゃないわ」これまでも、クロエという名前で呼ばれることはあれど、愛称で呼ばれるほど親しい人間は周りに居なかった。ただでさえ皆が同じ名前を持っているこの世界で、自分だと分かる名を持つのは余計に特別扱いされているようで悪い気はしない。顔を逸らして小さな声で付け足すと、耳に入ってきた音楽を聞いて不思議そうに目を数回瞬かせる。「っわお……。これが」実際に間近で見るのは、雑誌やテレビで見るのとはわけが違った。流れる音楽のテンポを肌で感じ、誰でも迎え入れてくれるような広いエントランスは細やかな装飾が可愛らしい。きっと、携帯でも持っていたら何枚も写真を撮っていたに違いない。記録に残せないその景色を記憶に残すべくじっと見つめてから、相手の手を握ろうと手を伸ばし)さ、アンタご自慢の遊園地、全力で紹介しなさいよ。
(/ほんの僅かな訂正ですが、失礼致します。最後の一文がドードー鳥さんの動きを確定するようなものになってしまったかと思い、少しばかり直させて頂きました。至らない点が多く申し訳ありません……!/蹴り可)
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