ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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茜と悟の2人は、デパートの4階にある寝具売り場に着いた。ゾンビの出没に備えて茜はアメリカ製軽機関銃と拳銃を、悟は旧ソ連製重機関銃2丁で武装している他、悟の背中にはアンテナのついた大きなリュックがあった。
「ふかふかのベッドは久しぶりだな。ここならゆっくり休めそうだ。」
「悟さん、そのリュックに何が入ってるの?」
「ああ、これか。旧式の無線機や衛星携帯電話、ノートパソコン、モバイルwi-fiルータとバッテリー、それに偵察用ドローン、それに『パスポート偽造機』にニセモノのビザとニセモノの免許証、クレジットカードに世界中の通貨・・・まぁいろいろだな。」
「・・・誰と通信するの?」
「・・・分からない。『自宅から半径3km外へ行くときは必ず持参しろ』とプリインストールされているから持っているだけだ。」
2人はダブルベッドに腰を下ろし、銃器類を脇に置いた。
「茜さん、さっき車の中で『試作品番号』とか口走ってたよな。1つ試したいことがある。右手を見せてくれないか。」
「・・・指紋、ないよ。」
「そんなことじゃない。」
悟は茜の右手に自分の左手を重ねた。茜は突然のことでどぎまぎしていたが、悟はいたって冷静だ。
悟は数分後自分の手を離した。茜はドキドキしてうつむいていた。
「・・・ダメだ。茜さんは本当に初期型の試作品だな。モルブルー通信ができない。」
「モルブルー?」
「モリキュラーブルートゥース通信の略で、触れ合うだけでお互いの情報を交換できる規格だが、茜さんにはそれがない。多分初期型の試作品として他のHWとは通信せず、ターミネーターみたいに単独で行動するしくみになっている。だけど・・・。」
「だけど?」
「・・・茜さんの手、あったかいな。」
2人とも頬を赤らめてうつむいたまま数時間が過ぎ、気づくと2人ともたまった疲れで寝入っていた。茜は午前2時過ぎに目を覚ましたが、悟はまだ寝ていた。茜は悟がベッドの脇に置いたリュックに目を向けた。
『勝手に開けたら悟さん、怒るかなぁ・・・。』
茜は悟の方を振り向いて、まだ寝息を立てていることを確認してこっそりリュックを開けた。悟の言った通り、確かに通信機器や軽量のドローン等しか入っていない。リュックのタブにはMADE IN CHINAと刺繍がある。しかし何か変だ。何でこんなにもたくさんのものが整然とリュックの中に収まっているのか?アメリカ製や日本製、その他海外製のいろんなものがたくさん詰め込まれているのならリュックの中は雑然としているはずだ。それらが中国製のリュックの中に整然と収まっている。そもそも何で悟がアメリカ製の武器とアメリカと敵対する旧ソ連の武器の両方を持っているのか?
「俺たちの秘密は中国にある。」
茜はどきっとして振り向いた。悟は起きていて、こちらを見ている。
「ご、ご、ごめんなさい。わ、わ、私・・・。」
「いや、かまわない。俺もいつか茜さんに言おうと思っていた。」
悟は茜にレクサスのキーを手渡した。
「夜が明けたら関空へ向かう。そこから上海行きの飛行機に乗る。昨日は俺が運転したんだから明日は頼むぜ!」
「え!そんな!?私免許持ってないし~。第一武器を持って飛行機なんか乗せてくれないよ~。」
「ハンドルを握れば『運転アプリ右ハンドルヴァージョン』が起動する。どのHWにもインストール済みだ。武器は『現地調達』する。」
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