ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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”女医”は銀座の女と2人で感染症隔離病棟に戻ってきた。
「看護婦さん、みんな大丈夫なの?何か変わりはなかった?」
「ええ・・・。神父さんも大阪の人も大丈夫です。あ、それと、彼が私の主人です。」
看護師は自分の伴侶を紹介した。”女医”は
「初めまして。ここで常駐勤務をしている西原(さいはら)遼子(りょうこ)です。」
「どうも、初めまして。彼女の夫で、この病院で医事課総合主任をしている川崎(かわさき)です。先生は以前どこかで見かけたような気がしますが・・・あ、いえ、私の勘違いかと・・・失礼しました。」
主任はNICUで居眠りをしていたときに見た夢の中で、拳銃自殺をして世界を破滅させた女性医師と遼子がよく似ていたのを思い出した。看護師は
「人事データベースで先生のファイルを見たんじゃないの?」
と付け加えた。川崎は、ああそうかも知れないと腑に落ちない納得をした。お互いの自己紹介が済むと看護師は遼子に
「あの男性カップル2人と男の人と女の人はどこですか?」
とたずねた。遼子は
「男2人はガス棟でNICU用の酸素ボンベの交換をしてからこっちに来る。あとの2人は・・・あたいのドジで敷地外に置き去りにしてしまったわ。」
とこぼして、ソファに座り込んだ。銀座の女は
「あの2人は、武器が扱えるから大丈夫よ。」
と取り繕ったが遼子は肩を落としたままだった。看護師は労をねぎらいながら遼子に写真を見せた。例の5歳児が交通事故で死亡した時の写真だ。
「先生。この写真をどう思います?彼は15年前にこの病院で死んでるんですよ。」
『・・・15年前に死んだ子供の細胞組織をこの病院で冷凍保管し、一部をHW開発用に使ったとしか思えない。しかし今それを言っていいものか?もしそうだとしたら、悟より先に造られた茜はどう説明する?』
遼子は考えた末、
「さあ、分からないわ。今は銀座の彼女の言うとおり、としか言いようがないね。」
「『玲奈(れいな)』って呼んでくれない。お店の売り名だけど。」
「ウチは『みくる』。本名はインパクトあらへんてゆうて、店長から名前もろた。」
大阪の風俗嬢も名を名乗った。遼子は目をキョロキョロさせた。
「あれ?なんかおかしいのん?」
「あんたじゃないわ。」
いつの間にか、主任と神父はいなくなっていた。
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