ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
通報 |
「あんた、大丈夫なの?どこを噛まれたの?」
と、”女医”はオトコに問いかけた。オトコは
「あぁ、アネキ。戻って来てくれたんだな。左のふくらはぎを噛まれたが大丈夫だ。」
と答えた。カレシは
「先生、他の3人は?」
と問いかけたすぐ横で銀座の女は
「あたしならここにいるわよ。悟と茜さんはまだ後ろの車の中。」
と答えた。
「何か2人で話があるみたい。なんだかラブラブみたいよ。」
「『悟と茜さん』?ああ、あの2人か。それがあの2人の名前なんですか?」
「『識別用』らしいわ。HWていって、タダの人間じゃないそうよ。」
「『タダの人間じゃない』?それは・・・。」
と、カレシが言いかけたところで”女医”が割り込んできた。
「今はその話はナシよ。後であたいが話す。今は彼の噛まれた左足の皮膚と筋肉の細胞のサンプルを採取して調べたいの。何か分かるかも知れないわ。」
「あんたらさぁ、何の話しよるんか知らんが、はよトラックを中へ入れてサンス交換スてくれんと、いつまでも通用門ば開けとられん。警備に怪しまれるっちゃ。」
とNICUの看護師が諭した。オトコはカレシに
「俺が運転するから、ガス棟の中まで誘導してくれ。」
と言った。カレシは了解し、2人はトラックをガス棟の中へ入れた。”女医”と銀座の女とNICUの看護師も後についていってガス棟の中に入り、NICUの看護師がガス棟の中においていたノートパソコンで<GAS BULD.>のアイコンの<CLOSE>をクリックし、シャッターも閉めた。
「んでぇ、さっきの白い車は何ぞね?米軍や旧ソ連軍の武器をようけ積んでたみたいやが。」
とたずねた。”女医”と銀座の女は顔を見合わせ、はっと気づいた。茜と悟の2人を通用門の外に置き忘れてきたのだ。銀座の女は
「ねえ看護婦さん、もう一度出入り口を開けて!あの2人も友達なの!」
と頼んだがNICUの看護師は
「1日で2回もシャッターを開け閉めしたらハッキングがバレてしまうっちゃ。警備が怪しんで、手動でシャッターと通用門をロックしてしもたら、もうどうしようもない。」
と答えた。NICUの看護師は続ける。
「明日になったら警備が交代するけん、そんときにまた芝居して開けるしかなかとよ。」
『はぁ~またあたいのドジが出た。』
と”女医”は顔を押さえた。敷地外に取り残されたレクサスの中の2人は話していた。
「・・・俺たち、取り残されたよな。」
「・・・うん、そうみたい。」
「茜さん。さっきは銃口を向けて済まなかった。ごめん、謝るよ。」
「ううんいいの、そんなこと。『あなたは絶対に撃たない』って分かってた。」
「そうか・・・。それが分かったていうのは、昨日のソフトウェアアップデートと再起動で理解できるようになったのか、それとも・・・。」
「私の”女の勘”で分かったの。」
今夜は”女医”にとって、またしても眠れない夜になりそうだ。しかしまだ太陽は高いところにある。
トピック検索 |