ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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『ウチの病院がこんなに大きいとは思わなかった。』
医事課総合主任は病院の案内表示を見ながら急ぎ足で妻がいる感染症隔離病棟へ向かった。感染症隔離病棟は文字通り感染症患者を一般患者から隔離するための病棟だ。病棟と医事課との連絡は全て院内電子メールのみで、医療事務を担当する職員が出入りすることはなく、医療器具や院内で処方する薬、機材等は全てAIがIoTで制御するロボットが搬送している。主任はNICUを後にして約40分後、感染症隔離病棟の入り口の扉を開けた。
「あなた!」と振り返る看護師。
「すまなかった。全て俺の責任だ。」と主任。神父も大阪の風俗嬢も2人を見ている。
「私たちのあの子は大丈夫だったの?」
「ああ、NICUの看護師がそう言っていた。だけどあの子も生まれつきエイズ持ちだ。まさかこんなことになるなんて・・・。」
「・・・そう。確かにあなたのせいよね。でもエイズは潜伏期間が長いわ。発症するまでにはあの子の治療方法も見つかるはずよ。」
看護師は夫に抱きついて励ました。しかし主任は
「その治療方法こそAKなんだ。」
と肩を落とした。が、なぜか妙な視線を感じて顔を上げた。
「あ」と主任。
「あ」と大阪の風俗嬢。
2人とももじもじして、視線が泳いでいる。
「2人ともどうなされましたかな?」と神父。もう隠し通すことはできないと悟った大阪の風俗嬢は
「いつもご指名ありがとうございます。」
と、作り笑顔で開き直った。看護師は2人を交互に見て、
「・・・あなた。そう言えばよく『TKD製薬との打ち合わせがある』と言って出張してたわよね。TKD製薬って、本社は大阪でしょ!?」
と夫をにらんで腕組みをした。
「・・・ったくあきれた。あなたが彼女の常連客だったなんて!」
主任も大阪の風俗嬢も、恥ずかしげに頭をかいた。看護師は、
「あなたがエイズをもらってきたご指名のその子もゾンビにおっぱい噛まれたそうよ。AKAKって一体AKって何なの?」
と問い詰めた。しかし主任は
「彼女からエイズをもらったんじゃない。俺のミスで俺が彼女にエイズを移してしまったんだ。」
とこぼした。神父は感づいたようだ。
「AKというウィルスは、それだけでは人間をゾンビに変えてしまうようですな。」
主任は話し始めた。
「・・・AKとは、『AIDS KILLER』の頭文字だ。だがエイズウィルスを殺す訳じゃない。エイズウィルスを無力化させて汗や排泄物と一緒に体外へ放出されるのを促進するウィルスだ。しかしそれをコントロールするのは非常に困難で、単体での暴走増殖が始まると、人をゾンビにしてエイズウィルスを探し回るようになる。」
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