ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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NICUの看護師とオトコトカレシの3人は20分程配管点検用地下通路を歩いてガス棟に着いた。
「ここはサンスやチッス、スイスなんかの可燃性ガスのボンベがようけあるさかい、火の元にゃ充分気いつけてや。タバコは絶対あかんで!」
とNICUの看護師は注意を促した。オトコはガス棟を見回した。およそ500本のガスボンベが並んでいる。
「これ全部交換するのかよ!?こりゃ大仕事だ。」
「いんや。そこのNICU用の酸素ボンベの半分だけ。そこの20本じゃ。」
NICUの看護師の指さす方を見るとNICU-Aと書かれたエリアに、縦に4列横に5本、計20本のボンベがある。その隣には20本のボンベが同じように並んだNICU-Bと書かれたエリアがある。
「看護婦さん、何故A側の20本だけなんです?」
とカレシが問うた。NICUの看護師は
「A側とB側の圧力を監視する自動調整弁があって、A側の20本の圧力が下がるとB側の20本を開けるしくみになっとるんじゃ。今はB側のサンスがNICUに供給されちゅる。その間にA側の20本を交換するんじゃ。」
と答えた。自動調整弁でA、B両方の圧力を監視し交互に供給・交換することでNICU用の酸素が24時間途切れずに供給され続けるしくみになっている。NICUの看護師はガス棟の入出庫シャッターの周辺を見回してシャッター制御盤を見つけ、扉を開け、鞄からノートパソコンやドライバー、LANケーブルを取り出してハッキングの準備を始めた。しかし、入出庫シャッターのすぐそばにシャッターの開閉ボタンがある。
「看護婦さん、わざわざハッキングしなくても、このボタンでシャッターが開くんじゃないんですか?」と、カレシ。しかしNICUの看護師は
「シャッターをガス棟の中から開け閉めするんじゃったらそのボタンだけでええ。そやけどシャッターの外から開けるときは警備に電話して4ケタの暗証番号をもらってそれを押して開けるんじゃ。おらがハッキングするのはシャッターやなくて、シャッターの向こうにある通用門を開けるためじゃ。」
と答えた。NICUの看護師は配線等のハード面の準備が出来ると
「おらは今からちいと芝居するけん、気い悪うせんとパソコンの画面見ちょってくれへんか。」
と言って、シャッターの開ボタンを押してシャッターを半分だけ開けて外へ出た。NICUの看護師は新入りの看護師にシャッターの開け方を教えるフリをして警備員室から4ケタの暗証番号を受け取り、そこから警備員室のサーバーを乗っ取るつもりなのだ。NICUの看護師は携帯電話から警備員室に電話して芝居を始めた。
「・・・ほれ!分かったか?あぁ警備さん、今から新入りにシャッターの開け方教えるさかい、暗証番号ゆうてくれへんか。」
警備員は暗証番号を電話で伝え始めた。NICUの看護師は無言でこちら側にあるノートパソコンの画面を見るよう指さした。オトコとカレシの2人はパソコンの画面を見ていた。
「3」●
「0」●●
「9」●●●
「1」●●●●
「で、これ押したら最後に緑の”承認”ボタンを押すんじゃ。分かったか?あぁ警備さん、すまねえだ。これで終わりじゃけえ。」
と言って承認ボタンを押した。パソコンの画面には「LOGIN COMPLETE」と表示された。
「看護婦さん、なかなかイカしてるねぇ」とオトコ。
「こんなもん、父ちゃんの仕事に比べたらハッキングのハの字にもなんねーべ」とNICUの看護師。
NICUの看護師は続けて
「次はお二人の出番じゃ。おらはこのパソコンで通用門を開けるさかい、お二人は通用門の外に停まってるボンベを積んだトラックを中に誘導をお願いするだ。」
NICUの看護師はパソコンに表示された画面の中から<GAS BUILD.>のアイコンを探して<OPEN>をクリックした。
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