ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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「なぁ、看護婦さん。ダンナさんと連絡取れたん?」
と大阪の風俗嬢は尋ねた。看護師は
「ええ。こっちに来るそうよ。『俺も君もHIVウィルスとAKウィルスの両方に感染しているから俺が感染症隔離病棟に入っても問題ない。』って言ってたわ。」
と答えた。看護師は続けた。
「あなたも『ゾンビにおっぱい噛まれた』って言ってたわよね。じゃああなたもHIVとAKの両方に感染しているわ。」
「ん~よう分からへんけど、ほな、神父さんは?」
『ん?』
看護師は神父の方を向いた。しかし神父の右手首の入院患者識別用バーコードが印刷されたストラップを見て納得した。神父はHIVにしか感染していない。
「神父さん、いつからこの病棟に入院してるの?」
「・・・そうですねぇ、2ヶ月ほど前からです。」
「キリスト教って、日曜になったら信者が集まって、みんなの前で話するんやろ?信者の人はどうなったん?」
「わたくしもそれが気がかりなのですが、そもそもわたくしは正式な神父ではありません。聖日礼拝での説教を託されただけの、ごく普通のカトリック信者です。」
「へ?ほな、なんでみんな『神父さん』て言うのん?」
「わたくしの幼なじみの女性のお葬式を執り行った神父様の遺言なのです。神父様は天に召される前にこうおっしゃいました。『若くして一番大切な人を失い、それまでの行いを悔い改めた君なら命の大切さが分かるはずだ。私の葬儀は君が執り行いなさい』と。この遺言はバチカンにも報告され、『正式な神父として認められないが故人の遺言を尊重するため』という理由で、わたくしが聖職代行者として神父様のお葬式を執り行いました。それ以来、教会に来られるみなさんが正式な神父ではないわたくしを『神父』と呼ぶのです。」
「神父さん。さっき大阪の人と紹介状を書いた医師のことで話してたわよね。」
「ええ。」
「他に何かご存じですか?例えば『研究テーマ』とか『グループ名』とか。」
「これも噂でしかないのですが・・・紹介状を書いた医師はみなこの病院で『吸血鬼の研究をしていた』とのことです。」
「はあ?吸血鬼?吸血鬼って、あの、ヴァンパイアのこと?」
「今時そんなん、子供でも信じひんで。」
「わたくしも取るに足らない話だとは思うのですが・・・わたくしの場合、HIVウィルスの先祖は1カ所だという話も、診断書を書いた主治医から聞きました。」
「仮にその話が本当だとしても、2人とも感染経路が違うわ。神父は元カノさんから、大阪の人はお客からでしょ。」
神父も大阪の風俗嬢も首をかしげた。看護師は思った。
『やはり主人から聞き出すしかないわ。』
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