ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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「さあね。『I’LL BE BACK』とか言ってたからターミネーターみたいにまた来るんじゃないの。」
”女医”はさらりと受け答えしたが内心は途方に暮れていた。当初の計画だった、病院の39番出入り口からのゾンビおびき寄せ作戦が失敗した上、日が明けて東から太陽が昇り始めて、今朝は昨日走ってきた西側に影が伸びているのだ。来た道を引き返すことは出来ない。建物に詳しい銀座の女に病棟へ引き返すルートを聞きたかったが、昨日走り疲れた銀座の女は缶ビールを一気に5つも空けて酔いつぶれてまだ寝ていた。”女医”は女に問うた。
「ところでさぁ・・・。あんたそもそもどこから来たの?」
「え!?」
「あんたにしろ、あんたに拳銃で腹を撃たれてゾンビになりかけたあの『ターミネーター男』にしろ、一体どこから来たの?」
「・・・そ、それは・・・その・・・。」
「何なの?言えない理由でもあるの?」
「言えないんじゃなくて・・・分からないんです、私も、彼も。」
「『分からない』???」
「あなたにしろあいつにしろ・・・普通の人間じゃあないわね。」
酔いつぶれて寝ていたはずの銀座の女はいつの間にか起きていて、”女医”と女の会話に聞き入っていた。銀座の女は、昨日男が女に手渡したウーロン茶のペットボトルを拾い上げて”女医”に見せた。
「よく見て、先生。」
「『よく見て』って、何なのよ?ペットボトルがどうかしたの?」
銀座の女は指摘した。
「・・・指紋がないわ。」
”女医”は目をこらしてペットボトルを見て思い出した。昨日男がコンビニから万引きしてきて女に手渡したはずなのに、ペットボトルには指紋が1つもついていない。
「・・・あんた!手を見せな!」
”女医”は強引に女の両手をつかんでぎょっとした。女の手のどの指にも指紋がない。
「あんた。『自分が覚えている一番古い記憶』は何?」
女の体がピクピクと震えだした。
「・・・あ、あ、『茜』(あかね) ・・・え、HW・・・タイプFヴァージョン2.0。試作品番号・・・。」
女が続きを言いかけたとたんにレクサスの白のSUVがコンビニの壁ガラスを突き破って飛び出してきた。運転しているのは男だ。男は車を”女医”達の前で停めて
「I’M BACK(戻ったぞ)!乗れ!」
と叫んだ。
「『戻り方』までターミネーター丸出し」と、あきれる銀座の女。しかし”女医”のは別の理由で驚いていた。
『・・・HUMAN WEAPON・・・まさか完成していたなんて・・・。』
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