語 2018-01-26 23:18:09 |
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(遠目からじゃ確信が持てなかったから、振り返った青年がやっぱり自分と同じくらいの年代で少し安心した。ほ、とひとつ安堵の息を吐き、本を落としそうになった彼に体が動きかけて。さて、自分のここの図書館の人であるという予想はドンピシャだったらしく、自分が少し誇らしくなった。「あ、そう!それそれ!」出かかっていたのに思い出せなかった言葉を聞き、ぽんと手を打った。思わず大きな声を出してしまったことにハッとして口を閉じれば、へへ、と誤魔化すように目の前の彼へ笑いかけて。図書館の人はどんな本の位置でも知っているというのがファンタジー小説の定石だと思う。現実と小説は違うとは分かっているけれど、少々夢見がちなことくらい許してほしい。早速本の位置をと口を開きかけるより先に、彼が言葉を紡いだ。会員証、会員証__、ああ、さっき作ったやつかな。ポケットに突っ込んだままだった気がするけど、そんなに大事なものなのか。受付みたいなところにいた人の話はよく聞かないで図書館を眺めていたからよく覚えていない。「ない…って言うか、さっき作ったばっかなんだ。…えっ、なになに、もしかして有名?」例の、と前置きをつけるくらいだからちょっとしたイレギュラーなのだろうか。浮かんだ有名なんて言葉に目をぱちりと開き手に持つ辞書をぎゅうと抱え直せば、そっと上記を尋ねて。)
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