鵺が見る夢　　

>46

はー、そうくる感じ？(真っ先に目に付いたコピー用紙と薄汚れたお守りを上段、中段から何れも引ったくるように取り出し、一先ずはコートの外ポケットに。それぞれの内容については後に確認するとしよう。続け様に床の上に片膝を着いて屈み、頭の位置を下げ、唯一目視できなかった最下段の様子を窺おうとした刹那、聴覚を刺激したのは決して狭くはない室内に響き渡る甲高い女性の悲鳴。自分がこの場で目を覚ましてから扉の開閉音は聞いていない。新たな来訪者とは考え難く、人の気配にはそれなりに敏感な職業柄、先客の存在を見逃したとも思えない。声の出所からおおよその距離は推測出来たが、下段は覗き込まず、逆手でさっと底面を撫ぜるだけに留めて、即座に腰を上げることに決め。ホワイトボードをスライドさせながら、左から右に教壇をするりと横切り、出入口とおぼしき二ヶ所の扉の前に立ち。利き手に握る銀色の刃をを軽く揺らして溜息混じりに嘆息、明らかに異変が生じつつある室内を振り返り)


持ちもの：折りたたみナイフ