五ろの図書委員 2017-09-09 17:45:51 |
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(このまま眠ろうとしていたのに相手が語る言葉は己の心を動かす物で、閉じていた目は自ずと開かれていて。『三郎が辛い時には僕がお前を笑わせてみせるよ』、その言葉は雷蔵が迷い無く出した答えの一つで。優柔不断だがここぞと言う時には迷わない男、そんなことは前から百も承知していたはずなのに迷いの無い真っ直ぐな想いを向けてくれていることが堪らなく嬉しくて、湧き上がる喜びが胸を強く締め付けて。君の笑顔を見れるだけで幸せになれるから、傍でずっと支えて来たけれど…本当に支えられているのは私の方だったのかもな。そう思うだけでぐっと熱い涙が込み上げて来て。相手を心配させてしまうのは絶対に嫌だから、俯いて瞼をギュッと閉じ口を一文字に結んで必死に堪えようとして。喉に直接相手の温度が伝わって来て、おもむろに目を開け。そして優しい相手の微笑みを目にすると、溜まった涙が零れ出してしまいそうで。“弱い所も全て晒け出せる相手と言えば”、そう問われると思いつくのは相手しかいなくて。変装名人故か、自ずと己の素顔を隠してしまう自分にとっては『鉢屋三郎自身』を見詰めてくれることは本当に本当に特別で、奇跡に近いことで。そう考えれば考える程言葉にしても伝え切れない感謝の想いが、どっと心に押し寄せて来て。相手が目を閉じたことを確認すると、相手の袖に手を伸ばし想いの強さを込めるようにギュッと力強く握り。「…うん、うん。ありがとう。」涙で震えてしまう声をなんとか抑えながら、微かな声で相手に伝え。力を緩めそっと手を離して。神様、こんなに優しい人を私にくれてありがとう。そう心の中で呟くと、微笑みを浮かべたまま緩やかに瞼を閉じ。幸せな涙で布団を濡らしながら、眠りに落ちて行って。➖➖朝日の眩しさを感じ、微かに瞼を上げさせると眩しい陽に照らされる相手が居て。このまま目を開けてしまおうか、いいやそれでは面白くはないだろう。そう思い、また視界を暗くして。髪や耳に触れられる感覚がくすぐったくも心地良くて、ずっとこうされていたいとも思うが、時が経てば経つ程大好きなあの笑顔を目にしたくなって。朝一番に口にするのは相手への好意の言葉にしたくて、暫く思案を巡らすと片手をのそりと動かし始め。己に触れられる手を片手で捕まえると、その掴んだ掌に己の頬を擦り寄せて。するとゆっくりと瞼を開け幸せそうに微笑みかければ、「…雷蔵、」と大好きな名前を呼んで。そうすればすくっと起き上がり、掴んだ手腕もろとも己の腕の中に納まらせ。「好き、大好き、愛してるよ、雷蔵。」と耳元で告げて。相手の肩に手を置いて顔を見合わせると、「おはよう雷蔵。…目、覚ませたかな? 」と悪戯っぽく笑顔を浮かべて。)
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