悲しき鬼 2017-09-03 18:02:37 |
通報 |
(背を向け去って行く鬼の後姿は僅かに向こうが透けるようなそんな印象を受け、碧が意識を無くしたままに喰らった生気は思いの外多量だったようで。二人きりの沈黙に戻った世界、激しい風は止み、暗雲の立ち込めた空は明るさを取り戻しつつあったがぽつりと地面に落ちた雫。常に晴れ渡っていたこの場所に降ったはじめての雨はやがて激しい、それでいて静かな雨へと変わりその場に崩れ落ちたままの二人を濡らして行き。雨とも彼女の涙とも、彼の涙とも分からない水に頬を濡らされ、薄く開いた瞳はまだ少し暗く澱んでいるものの確かに青く、彼女の頬へと真白な手を伸ばしてはそっとその頰を撫ぜ)
──す、ず……
トピック検索 |