悲しき鬼 2017-09-03 18:02:37 |
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……。
(何かを言い返す余裕もなく、鈴は碧を抱き締めた。渡さない、だなんて言葉をいうことは出来ずに、でも彼をまた鬼にしてしまうのが哀しくて、そして怖くて。いつもならばきっと強気な言葉を返せていただろうけど、酷く心を消耗してしまった今では何かを言い返すことが出来ない。見えない鎖、何てものは実に脆く儚いものだ。それに縋るように生きている自分はきっとあの鬼たちにはひどく滑稽で哀れに見えていることだろう。「……碧、」ぽつり、と唇からこぼれ出た彼の名前は酷く悲しげな響きで1粒の涙と共に地面へと落ちて。)
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