悲しき鬼 2017-09-03 18:02:37 |
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(ピン、と空気が張り詰めた。張り詰めた、というよりは体感温度が下がり屋敷全体が禍々しくなった。と言った方が表現としては正しいかもしれない。鈴は思わず顔を上げて辺りを見回すが、やはりそこにあるのは月明かりに照らされた闇と自分ひとり。空気が変わったこと以外に何も変わりはない。──と、遠くから鋭く襖が開いた音が響き渡り鈴は悲鳴をあげる前に両手を口元に当ててなんとか声を出すことを抑え。どうしよう、と考えるも生憎今は息を潜めてここにとどまることしか出来ずに背中を部屋の一番奥の壁につけてただただ彼から預かった簪に指先を触れさせて。)
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