悲しき鬼 2017-09-03 18:02:37 |
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…鈴、…っ…!
(逃げろ、と目の前に居る訳でもない相手に向けて漏らした言葉は声にもならず、ただ相手の耳元で簪がしゃらりと微かな音を立てただけで。昨夜に比べれば深夜に近い時間、ぐったりと畳に倒れ込んでいた身体を起こした彼は昨夜と同じ何処までも紅い紅い瞳をしていて。昨日に比べて身体の自由が効きにくいのは碧の必死の抵抗のせいだろうか、苛立たしげに手を動かすも意識が鬼へと移り変わったことで屋敷全体の空気も張り詰めた禍々しいものへと変わり。なんとか体制を立て直すと襖を開き、その物音さえもが屋敷に鋭く響き渡るようで)
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