悲しき鬼 2017-09-03 18:02:37 |
通報 |
…鈴といると、気持ちが落ち着く。
君みたいに優しい人に出逢ったのは初めてだ、
(相手の言葉を聞いてようやく普段の彼らしく柔らかく微笑むと、「こんな湿っぽい部屋に居たら気が滅入る、外に出よう。」と言って相手の手を引きそのまま抱き上げて。また幾つか本が床に落ちるのも気にせずに部屋の襖を閉めてしまうと縁側から下駄を引っ掛けて庭に出ては一番気に入っている桜にも藤にも似た花を咲かせる木の下へと。そのまま抱き上げていた相手を低い場所にある木の幹へと座らせると桃色や薄紫の花々を背負った相手を見上げてそう言う彼の青は、先ほどまでの虚ろげな色を消し去り光を受けて何処までも深い湖のように美しく。)
鬼は、私を臆病だと言った。
でも鈴は、私を優しいと言ってくれる
そんな優しい人間の心を枯らす事の無いように鬼を拒絶した私はきっと間違っていなかった…臆病なだけではなかったと、信じていられる。
トピック検索 |