主 2017-01-16 01:20:26 |
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>那智
( 時々通る人が不思議そうな顔をすることも、目の前をカップルが通り過ぎていくことも、もはやどうでも良い。結局離れたことでどれだけ大切だったか気付いてしまったのだ、今まで近くにいたからこそ抑えていられた気持ちも、もう限界ぎりぎり。関係が壊れるのが怖いなんて、自分本位な理由で諦めたのが悪いのだ。とにかくちゃんと伝えて玉砕すれば良い。固く握った手は冷たく震えているのを自覚した。こんなにも苦しいと思うことはあっただろうか。ぐるぐる、ぐるぐる。思考を遮るように掛けられた声は、紛れもなく待っていた彼その人で。素直に一緒に帰りたいだとか、会いたかっただとか、そんな風に口に出すのはさすがにハードルが高い。可愛げのない文句を口にしたそのとき、クラスメイトが此方へと歩いてくるのがわかった。クラスメイトは彼の表向きの面しか知らない。表面上可愛い子を演じているのが、そして嘘だらけの恋人関係だったことがバレてしまえば、お互いにとって不都合。ほとんど反射的にぐいと腕を掴んで引き寄せると、頬へと口付けを。それから何事もなかったかのように離れ、小さい声で謝罪を。気付かれるのは時間の問題か。ゆっくりと手を引いて問い掛けるも、もはや嫌だと拒む隙は与えずに。)
あんな去り方、許すとでも思った?……あ。──ごめん、此処だと駄目みたい。外で話そうか。ちょっと遠いカフェとかなら、問題ないでしょ。
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