道化師 2017-01-09 17:02:35 |
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──貴男の手で殺さなくて良いの?そうね、じゃあ…優しく、一抹でも確かな情を込めて、ゆっくりと殺してくれるのなら、貴男でも構わないわ。嗚呼それとも一緒に心中かしら?…否、それは駄目ね、暗殺を生業としてる人間が自ら命を断つ何て荒唐無稽な咄だものね。
( 時間が流れはこれ程迄に早かったのだろうか。否、自身の感覚が彼と接触を図った事で麻痺したのかもしれない。宵闇が翳りを落とす宮廷内の情景も趣きが有るけれど、明方の明星も酷く美しく、然れど徐々に明度の上がる天とは相反して心境が晴れる事はなく。密偵である自身と暗殺者である彼、弱みを握られている自身と弱みを握っている彼。決して相容れない関係性であると云うのに、共に過ごす時間は何故如何ようにも心地好いのか。空を仰いだ腕が元の所在に着くのを僅かに視界に収め乍、スカートの裾を翻し彼の真正面に対峙すると自身にでさえ嘘か真か分からぬ詞を紡いだ。 )
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