▷◀︎ 2016-12-26 23:06:48 |
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嗚呼、彼れはあの場に辿り着いてしまったが故の不幸の賜物、私もまた被害者なのです。
______などと云っても、信じないのでしょう?
( 熱した鉄が冷めるが如き、芯まで冷え切った其の声に視覚を失った五感が研ぎ澄まされる。近付いた侭緩慢に首を振り乍ら、芝居掛かった口調で上記を述べる。これで幾度目の嘘だろうか。はて、偶に己は嘘で出来た塊の様に思えるな、等と心の中で独りごちつつ、不意に訪れた胸元を掴まれた感覚に刹那動揺を隠せず。先程と同じ様に飴が地に散ず音。道行く人の僅かな悲鳴が喧騒に呑まれ、此方の肌をちりと焼く程度、好奇の視線が頬に突き刺さった。力付くに引き裂かれた目元の包帯がはらりと肩に落ちて、差し込む久しい陽の光に須臾に瞳を奪われる。眩しそうに寸時瞳を細めてはぐいと近付く彼の顔に瞳子を開き。忽然狭まった距離は恐れ戦くよりも先に歓びが訪れ、愉悦を込めた笑みを零し。次いで懐の重みが無くなった事に気付いては、僅かに顔を歪めて。此れで彼と己を繋ぐものは無いのだと知らしめられたと言わんばかりの表情の侭、唇だけ笑んで見せ )
此の首は意外と高いのですよ。着けるのならお早めに、ね。
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